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 11歳になる黒パグ犬のムク(写真、雄)は、最近とみに老化が著しく、顔面といわず腹や脚といわず白い毛が目立ってきた。
 行動パターンも変わり、散歩からしてグズるようになった。ハーネスをつけようとすると、“あのなあ、オレは行きたかないんだよ”と言わんばかりに、上目遣いでこちらをにらむ。
 歩き方もどこか投げやりで、面倒臭げにヨタヨタ歩き、時々、大あくびをする。「おい、もっとやる気を出して歩けないのか」と叱咤しても、誰のことやらという調子なのだ。
 もう一つ散歩でカチンとくるのは、日頃の運動不足を解消してやるため、コースを長めにしようとすると、四肢を踏ん張り、テコでも動こうとしないことだ。
 言うことを聞かせようとリードを引っ張ると、ますます険しい表情で踏ん張る。
 根負けして日頃のコースに戻ると、“そう、これでいい”とばかりにスタスタ歩きだす。しかも、自宅のマンションが見えてくると途端にペースが速くなる。
 散歩から帰ってほっとしたのもつかの間、食事がまた苦労の種なのだ。若いころは、ドッグフードに鶏のささ身などをまぜる気配だけでケージに飛び込み、ガツガツ食べたのだが、今では拒食のポーズをとる。
 ボーロや魚肉ソーセージをペチャ鼻に当てて食い気を誘うが、おいそれとは乗ってこない。しかし食わないかというと、見ていないとモリモリと食べる。
 飼い主の思いどおりには動かず、頑固になる──古希を迎えたわが身に照らすこともある。
「さて、寝るか」と声をかけ、横になると、枕の横にあごをのせてくる。大いびきには参るが、その姿を見ると、やっぱり憎めない。
 案外、向こうもそう思ってくれているかも……。犬バカですね。

(奥田益也さん 東京都/70歳/無職)

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