今回開発されたAR入力技術のイメージ
<br />(株式会社NTTデータ提供)
今回開発されたAR入力技術のイメージ
(株式会社NTTデータ提供)

 情報が表示されている画面を見ながら、周りの状況も確認できる眼鏡型ウェアラブル端末として注目されている「スマートグラス」。映像鑑賞やゲームといった趣味的な用途以外に、ビジネスでもさまざまな使い方が模索されているところだ。これまではもっぱら「見る」ことのみに使われていたが、今度は、スマートグラスをかけたまま、文字を「入力」できる技術が開発されたのだという。

 株式会社NTTデータは、スマートグラスをかけることで見える画像や映像と、人の指の動き(ジェスチャー)とを組み合わせたAR(拡張現実)技術の開発を発表した。2015年度早期の実用化を目指すという。

 今回開発されたAR入力技術は、スマートグラスに内蔵されたカメラで利用者の指の動きを検知し、画面上での軌跡を追うことで、キーボードやタッチパネルを使わない文字入力を可能にした、というもの。数字や文字のキーボードの映像が表示される画面は利用者にしか見えず、配列はランダムに変更することもできるため、暗証番号入力などの際、他者からののぞき見を防げるという。

 また、キーボードの映像を指でなぞって入力していくので、キーボードやタッチパネルのボタンを押すよりも、速く入力できるメリットもある。

 同社によると、ハンズフリーの状態で使えるスマートグラスは、製造業界などで、マニュアルの閲覧や作業指示の確認、離れた場所で作業をしている人とのリアルタイムでのコミュニケーションといった活用方法が期待されている。しかし、文字入力や既存のIT機器との連携方法が確立されておらず、セキュリティーの確保が課題となっていた。

 同社は今後、製造業界での利用を想定し、今回のAR入力技術を搭載した試作機を用いた実証実験を進めていくとしている。さらに、製造業以外にも、食品加工や物流、保守メンテナンス、救急医療といった、機密性の高い業界での活用も想定しているのだという。

 また今回の技術は、専門的な業界だけでなく、将来的に、銀行などのATM(現金自動預払機)やコンビニエンスストアのオンライン取引用端末を利用する際の暗証番号入力といった場面で応用される可能性も秘めていそうだ。

 眼前に現れるシースルーの画面(情報)を操作できるなんて、まさにSF映画やアニメで見た世界そのものだ。将来的には、パソコンがなくても、スマートグラスさえあれば、書類の作成や個人情報の登録、メールのやりとりなどができるようになるのかもしれない。