クリエイティヴの場= BEAT MUSIC
マーク・ジュリアナのBEAT MUSICは、世界トップレベルのドラマーの1人である彼が、マシーンの作り出すビートに惹かれ、影響を受けた生身のドラマーとして、ライフワークのように取り組んできたプロジェクトだ。ジャズにおいてはもちろんのこと、ポピュラー音楽全般で、ドラマー/ドラムの重要性が再認識されてきたのが近年の音楽シーンの流れだが、マークのBEAT MUSICはそれをさらに前に進めるためのクリエイティヴな実践の場であった。
これまでBEAT MUSICとしてリリースされた作品は、まるで優れたビートメイカーが作ったビート集のように直観とアイディアに溢れたものだった。J・ディラやマッドリブがそうであったように、制作のスピード感も重視され、良い意味でラフにアウトプットされてきた。
そして、最新アルバム『ビート・ミュージック!ビート・ミュージック!ビート・ミュージック!』で、セッションと録音を繰り返してきたBEAT MUSICは次の段階に進んだ。完成度が高まり、生ドラムもプログラミングされたビートもシームレスに繋がっていく音楽の可能性を示し、テクノからダブまで、ジャズからヒップホップまで、ビートを軸にした多様な音楽の魅力を包括的に楽しめる作品になった。マークは、筆者がおこなったインタビューでこう語った。
「BEAT MUSICはこれまで10年以上さまざまな形態、ミュージシャン、楽器編成で活動してきた。現在の形態は完成形なんだ。今作は自分にとっていろいろな意味でデビュー作だと思っている」
オープンで即興性に満ちていたBEAT MUSICは、マークが事前に曲を書き、演奏するスタイルに変わったのだ。実際、『ビート・ミュージック!~』の各曲は作り込まれた展開があり、アルバムとしてのまとまりもある。これまでのセッション的な録音から、より細分化されたプロデュースのもとに制作された。そのことによって、マークがBEAT MUSICでやりたかったことも、より明確化されてきた。
「マシーンが作るビートを正確にリプロデュースすることは考えないが、マシーンそのものではなくマシーンを通して表現される感情、スピリットをいつも愛している。エイフェックス・ツイン、スクエアプッシャー、フォー・テットら90年代にUK から来た音楽にはとても胸を打たれたんだ」
マシーンが作り出したビートを生身のドラマーが正確にトレースしたいと思うのはなぜなのか、という問いにマークはこう答えたが、その感情、スピリットを、現在のBEAT MUSIC は確かに表現し得ている。それをライブでも体験できることが楽しみでならない。
TEXT:原雅明
◎公演情報
【マーク・ジュリアナ’s BEAT MUSIC】
ビルボードライブ東京
2019年7月24日(水)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30
ビルボードライブ大阪
2019年7月25日(木)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30
<出演メンバー>
Mark Guiliana (Drums, Electronics)
BIGYUKI (Keyboards, Synthesizers)
Nicholas Semrad (Keyboards, Synthesizers)
Chris Morrissey (Electric Bass)
◎リリース情報
アルバム『BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!』
AVAILABLE NOW
AGIP-3603 / 2,300円(tax out.)
*日本盤オリジナルライナーノーツ収録