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 農村の僕の家の周りには何匹かの半野良がいる。
 その中の1匹で、足の先だけが白いので娘がソックスと名付けた黒猫は、子を産む度に物置に連れてきて育てていた。
 今回も子猫を運んでくるのを見かけたが、数日後の夜、可哀想にソックスは車にひかれて死んでしまった。
 子猫たちはどうしたかと物置を探すと、三毛が2匹と真っ黒いのが2匹、段ボール箱の中でおびえたようにかたまっている。まだ手のひらにのる大きさだ。
 さてどうしたものかと妻と考えたが、うまい方策も思い浮かばず、とりあえず牛乳を与えて様子を見ることにした。
 翌日になると、三毛2匹はどこかに姿を消していた。残った2匹は、黒い雑巾のように汚れてじっとしている。それにしてもひどい姿だ。目やにで目はふさがれ、鼻詰まりでやっと息をしている状態だ。これでは自然死を待つばかりだと思ったが、すり寄ってくるのを見ると可哀想になり、妻は獣医に連れていった。
 1匹の片方の目には白い膜がかかり、もう片方も失明の恐れがあると言外に安楽死を勧められたが、その選択はしなかった。
 子猫用の餌を与えると、なめるようにして食べる。これなら何とかなりそうだ。奇跡的に2匹は生きのび、片目を失明した方を鈴(写真右)、もう一方をマック(同左)と名付けた。まだ小さいので性別は不明だ。
 なでてやると、喉をゴロゴロ鳴らして家の者につきまとう。こうなると可愛さが増し、目が離せない。
 やがて畑にもついてくるようになった。僕は腰が悪いので畑に椅子を置いて草刈りをしていると、爪を立てて体に上って邪魔をする、怒ると木に登って下りられなくなるなど、仕事にならないが、こいつらと戯れていると憂さを忘れる。

(山岸重治さん 長野県/82歳/無職)

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