ハリウッドでリメイクされ、日本でも絶賛上映中の映画「GODZILLA ゴジラ」。興行収入はすでに全世界で累計500億円を突破、その快進撃はとどまることを知りません。
米国版の製作会社レジェンダリー・ピクチャーズの発表によれば、既に続編が製作されることも決定済み。続編の宣伝映像には、ゴジラのライバル怪獣、モスラ、ラドン、キングギドラのシルエットが登場したことも話題となっています。
さて、続編に登場予定のモスラ誕生の背景を描いているのが、本書『モスラの精神史』です。本書によれば、モスラ誕生には中村真一郎、福永武彦、堀田善衛という3人の文学者が深く関与しています。1961年公開の映画『モスラ』は、3人の共作『発光妖精とモスラ』を原作とすることにより、従来の怪獣映画とは一線を画す、幻想的で物語性を持った作品となりました。
モスラと言えば「♪モスラ~ヤ~モスラ~」のエキゾチックな旋律が印象的な『モスラの歌』を思い浮かべる方も多いでしょう。実はこの歌は日本語で書いたものをインドネシア語に翻訳したものなのだとか。南太平洋にある架空の島・インファント島の守護神モスラは、日本へ連れ去られた妖精・小美人を救出するために登場します。ゴジラが傍若無人に街を破壊しまくるのに対し、巨大な『蛾』の怪獣・モスラが戦うのは、あくまでも小美人を「守る」ため。平和を愛する人間の味方として描かれている怪獣なのです。
卵から孵化し、幼虫から成虫へと三段階に変化するモスラは、サナギを作るために白い糸を吐いて繭を作りますが、『モスラ』では東京タワーに、1992年公開『ゴジラVSモスラ』では、国会議事堂にも繭を作っています。モスラの名前は、英語で蛾を意味する「moth」に由来しており、繭を作る性質はカイコガを、成虫の外見はヤママユガをモデルにしています。
今年6月から世界遺産に登録されたことが記憶に新しい『富岡製糸場と絹産業遺産群』に代表されるように、かつて日本人と製糸業・養蚕業とは切っても切り離せない関係にありました。「絹の国日本」と言われるように、昔は至る所に蚕の餌になる桑畑や、家々に機織り機があり、養蚕はごく身近なものだったのです。太古の昔より根付いていた養蚕文化を背景に生まれたモスラは、まさに日本発のオリジナル怪獣と言えるでしょう。続編『ゴジラ』では、私達日本人に愛されてきたモスラがどのように描かれるのか、ぜひご覧になってみてください。