赤、ピンク、黄色。冒頭の写真で紹介された河川の色は、どれも毒々しい。中国の環境汚染がPM2.5をはじめ、大気から水質、土壌まで広範囲に及んでいることを、中国関連のルポを手がけてきたジャーナリストが報告する。
 著者は、がん患者が多数出ている「がん村」を訪ね回る。近くには汚染水をこっそり川に流す大工場がある。カドミウムに汚染された土と水でコメが生産され、食べ続けた人々にイタイイタイ病に似た症状が出ている。クロム公害の原因となっている工場ではペットフードの栄養添加物が生産され、世界中に輸出されている。著者の取材活動はたびたび公安に妨害される。環境NGOやメディアの活動も十分ではない。農民や都市民の「公益」意識も高くない。急速な経済発展の陰で広がる大規模な「複合汚染」の背後に、一党独裁政治の問題が浮かび上がってくる。
 日本が協力できる分野は多いという。ただ、公害で苦しむ市民への「国際社会の関心」こそが彼らの意識を変える契機になるとの指摘も、もっともだと思う。

週刊朝日 2014年4月18日号