女性誌に掲載された「OLの財布事情」に関する特集記事をおよそ30年ぶん収集、分析、考察した労作。「どうやら女子の財布を見ていくことは、OLのお金の使いみちとか消費スタイルとかだけでなく、若い女性の社会の中での立ち位置を検証することになるのでは、という予感」に捉えられた著者が、膨大な資料を読み込んでゆく。そこに立ち現れるのは、時代に翻弄されながらも働き続ける女性たちの姿だ。
景気の良し悪しだけではない。男女雇用機会均等法の成立など、女性の働く環境は、経済状況と法制整備によって、ずいぶんと様変わりしている。そんな中、変わらないのは「女性は消費するために稼いでいる」というイメージ。雑誌後半のモノクロページに掲載されたやりくり術は、そのまま雑誌前半のカラーページに掲載された洋服やカバンを買うために生かされる……この循環構造は女性にかけられた呪いのよう。「女性の財布も、消費させるためだけに注目されることがなくなることを、願わずにはいられない」という著者の言葉はとても重い。
※週刊朝日 2014年3月28日号