俳優、唐田えりか。20歳で初めてヒロインを演じた「寝ても覚めても」では、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩いた。俳優としてさまざまな役に挑戦するなか、週刊誌報道で役者業からしばらく離れることになった。
「自分と向き合い続けた」期間を経て、2021年夏、久しぶりに挑んだオーディションで映画「死体の人」のヒロイン役を射止めた。
作中では、死体役ばかりの売れない役者・吉田広志(奥野瑛太)が部屋に呼んだデリヘル嬢・加奈を演じる。不器用な二人の葛藤や生きざまを通して、生きることと死ぬことをコミカルに描いた。
芸能界に入って8年がたち、現在25歳。かつては否定されることが怖かったが、今は積極的に「ダメだし」をもらうようになった。役者として生きるために芽生えた覚悟と責任について語った。
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――「寝ても覚めても」(濱口竜介監督・2018年公開)のころは、演技やオーディションに苦手意識があると話していました。
ここ数年でちょっとずつ楽しめるというか、気が楽になった気がします。前は、「絶対に受からなきゃ」みたいな気持ちがありましたし、「どうやったらいいお芝居ができるんだろう」と重い気持ちで向き合っていました。
もちろん今も受かりたい思いはちゃんとあるんです。けど、言い方が難しいな。なんて言えばいいんだろう……。前はオーディションで否定されるのがすごく怖くて、落ちたら「自分自身に価値がない」と思うくらいの落ち込み方をしていました。でも、今は「否定されてもいいからこの役に集中して挑む」という覚悟のほうが大きくなった気がします。
――否定されるのが怖いという思いは、いつまで持っていましたか。
少しずつなくなっていった感じです。でも、「寝ても覚めても」は自分的にはけっこう大きいターニングポイントで、ちょっとずつオーディションに対して背負いすぎなくなっていったような気もしています。ここ数年は自分と向き合う時間が長かったので、それも影響しているように思います。