Nulbarich【Guess Who?】追加公演で僅かに見えたベールの向こう側「付いてこなかったら絶対置いてっちゃうからね」
Nulbarich【Guess Who?】追加公演で僅かに見えたベールの向こう側「付いてこなかったら絶対置いてっちゃうからね」
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 1980年代に流行し、2015年ごろから再熱し始めたシティ・ポップ。より現代的なサウンドを感じられるものとしてネオ・シティ・ポップと評されることもあるが、このムーヴメントに乗りながらもHIPHOPやR&B色の強いNulbarichが、2017年2月22日に【Nulbarich 1st ワンマンライブ「Guess Who?」追加公演】を開催した。のちにリーダーでありヴォーカルのJQは「どんくらいヤバいか判断してってよ」と発するが、その答えは約600人の大衆に委ねられたことになる。

Nulbarich【「Guess Who?」追加公演】写真

 2月3日に渋谷WWWで行われた初のワンマンは即日完売。今回の会場はそれよりも約200人多いキャパシティの代官山UNITだったが、この日も満員御礼となった。ステージ正面にバンドロゴが投影され、ツインギター、ベース、ドラム、キーボードのメンバーに続いてJQが登場。昨年秋にリリースされた1stアルバム『Guess Who?』と同じく、まずは「Intro」で各々が楽器をかき鳴らし、ブルージーなベースラインからの爽やかな展開が印象的な未発表曲「TOKYO」へ。その後、「Hometown」と「Fallin'」を披露すると、JQは「はじめまーして。こういう感じなんです。お面つけてくると思ってた?」とおどけてみせた。

<「残念、思ったより普通でしょ」少しずつ脱がされつつあるそのベール>

 詳しいプロフィールや顔を明かさず、アーティスト写真などには「ナルバリ君」というキャラクターを使用しているNulbarich。突如現れた謎多きバンドとして注目された一面もあるが、「残念、思ったより普通でしょ。僕も人間として生まれてますからね」とJQが笑うように、洒落てはいるものの非常に親しみやすい印象だ。そもそも謎めかしているわけではなく、演奏形態によりメンバーが変わることから“覆面バンド風”になったとのこと。なお、現在はメンバーもほぼ固定されており、そのベールもこうして少しずつ脱がされつつある。

 アルバムのリード・トラック「NEW ERA」では、磨りガラスのような澄んだ不透明感のあるJQの声がよく響き、この辺りから徐々に歓声も上がり出した。バンド・セッションではメンバーも底力を発揮。迷いのないシンプルなドラムに支えられながら、艶やかなレスポールと軽快なストラトキャスターの掛け合いが始まると、唯一の女性メンバーは金髪にレザージャケットというロックなスタイルで2台のキーボードを伸びやかに操り、5弦ベースを持つメンバーはさながらベースとは思えない複雑なリズムを刻んでみせる。その様子を「何杯でも飯食えるでしょ?」と嬉しそうに見守るJQ。なんとも微笑ましいこの光景は、お互いの音楽性を信頼しているからこそ生まれるものだろう。

 そのとき、その場所で奏でられる音へのこだわり。MCの間も無音であることはほとんどなく、キーボードを主として、バックではなにかしらの楽器が鳴る。また、「Everybody Knows」のギターフレーズも付点音符つきの跳ねるリズムで演奏されるなど、楽曲には必ずと言っていいほどアレンジが施されていた。楽曲の特徴としては日本語と英語の入り混じったリリックも挙げられるが、これもまた響きを重視した結果。人々の日常に溶け込める音楽でありたい、という想いがあるようだ。

<「付いてこなかったら絶対置いてっちゃうからね」彼らは世界をひっくり返すのか?>

 その耳辺りのよいリリックの内容を紐解いてみれば、「SMILE」<not bad it's so fun(なんだか悪くないしすごく楽しいよ)>、「Spread Butter On My Bread」<Albeit good or bad face the fact(良いにしろ悪いにしろ現実を受け止めろ)>など、目立つのは現状をありのまま受け入れる姿勢。“何も無いけど満たされている”という意味を持つ造語のバンド名にも通ずるものがある。その一方、本編のラストで披露された「LIFE」には、<When you're going through a bad time/let's flip the world upside down(もし辛い思いをしているのなら/一緒にこんな世界をひっくり返そう)>ともあり、これを引用した上でJQはこんな言葉も放っていた。「なんか俺らに期待してるでしょ? 行けよってことでしょ? 行くよ。手を引っ張るほどの優しさは持ってないんですよ。付いてこなかったら絶対置いてっちゃうからね」

 アンコールでは、1980年に発売されたRolandのリズムマシンであり、最近ではピコ太郎「PPAP」でも使用された名器『TR-808』をJQが用いながら、キーボードと2人で「NEW ERA(English Version)」を、そして再びメンバー全員で「I Bet We'll Be Beautiful」を演奏。セットリストにはアルバム収録曲がすべて入っているように持ち曲は少ないが、延々と音を鳴らせるだろう技量とセンスは確かなものだった。

 初夏にはEPをリリースすることを発表し、呑気な顔で“こんな世界をひっくり返そう”としているようにも思える彼ら、背負う期待は非常に大きい。

テキスト:佐藤悠香
撮影:佐野円香

◎【Nulbarich 1st ワンマンライブ「Guess Who?」追加公演】セットリスト
2017年2月22日(水)東京・代官山UNIT
01. Intro
02. TOKYO
03. Hometown
04. Fallin'
05. NEW ERA
06. Ordinary Boy
--- Band Session
07. Everybody Knows
08. SMILE
09. Lipstick
10. Spread Butter On My Bread
11. LIFE
EN1. NEW ERA(English Version)
EN2. I Bet We'll Be Beautiful

◎リリース情報
EP『タイトル未定』
初夏リリース予定

アルバム『Guess Who?』
2016/10/05 RELEASE
<CD>NCS-10121 / 2,200円(tax out.)

◎ライブ情報
2017年4月07日(金)【ZIP-FM presents JAMZ vol.1】
2017年4月08日(土)【SYNCHRONICITY'17】
2017年4月14日(金)【FM North wave presents「FONS 5UP」】
2017年5月07日(日)【POP HILL 2017 in 金沢】
2017年5月13日(土)【OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2017】
2017年5月20日(土)or 21(日)【GREENROOM FESTIVAL'17】