今週もまた星野源の「恋」がHot100を制した。ミスチルやFlowerを筆頭に続々と強力な新譜リリースが続くというのに、まったく揺るぎない強さは圧倒的。この勢いはまだしばらく止まらなさそうだ。
そんな星野源は、シングル・ヒットが功を奏してアルバムにも影響が出てきている。現時点でもっとも新しいアルバムにあたるのが、今週のHot Albumsで13位を記録している『YELLOW DANCER』だ(【表1】)。本作は2015年12月リリースなので、1年以上も前。もちろん、「恋」は収録されてはいないが、「恋」のロングセールスに寄り添うようにセールスを伸ばしている。グラフをよく見てみると、セールス自体は昨年の6月くらいではいったん60位台にまで落ちていた(紫のグラフ)。しかし、ルックアップ(CDの読み取り数)に関しては20位を下らず、ずっと上位をキープしている(オレンジのグラフ)。これは何を意味するかというと、CDを買うブラックユーザーへの訴求はいったん落ち着いたが、レンタルを利用するグレーユーザーの取り込みは継続しているということ。そこへ、「恋」の大ヒットによって再びアルバムのセールスが上がって不動の人気を決定付けたという訳だ。星野源に関しては、リリースやドラマ出演などの一連の流れがすべてうまく組み合わさっており、まさにヒットの教科書のような展開になっているといっていい。そのベースには、音楽性がしっかりと確立されたアルバムが存在しているのだ。
同じくHot Albumsで14位を記録しているいきものがかりのベスト・アルバム『超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~』も、近い動きといっていいだろう(【表2】)。アルバムは昨年の3月にリリースされており、ベストということもあってロングセラー作となっている。そして、セールスのポイントはいったん下がったが(紫のグラフ)、ルックアップは上位をキープし続けたまま(オレンジのグラフ)。先日の“放牧宣言”があって、セールスのポイントが再浮上しチャートも上昇している。まさに、グレーユーザーがブラックユーザーへと変化しているのだ。
星野源もいきものがかりも、もちろん、すでに結果を出しているからこそのチャートアクションではあるが、それでもチャートの上位をキープし続けるというなかなか難しいことを実現している。そこからも、彼らの真の実力が伝わるだろう。text by 栗本斉