これは新書として発売してないかもしれませんが、大きさや厚さや手触りは新書なので新書カウントでいきます。前に「ちくまプリマー新書」が新書の新しい形(小説、マンガ、写真集などの方面への拡散)をつくるのではと思ったが案外広がってない。そっちが停滞しているうちに角川からこれが出た。そうか、こういうのもアリですよ。新書が「カネ儲けをしなければならない会社員にイヤイヤ」そして「定年オヤジに趣味の副読本として」読まれている中で、このタイプなら若者の活字好きカルチャー好きにアピールする。
しかし憧れますねえ、みうらじゅんには。いつか誰かが「大瀧詠一に憧れる。好きなことやって、仕事ほとんどしないで暮らしている。大瀧になりたい」と書いていたが、私はみうらじゅんになりたい。この人の、自分の趣味をかたちにしていく術はすごい。といっても錬金術というにはあまりにもささやかであり、本人もすまなそうに恥ずかしそうにしているので腹が立たない。世の中にたくさんいる「ちょっとズレた立ち位置でいい気になってる人」はみうらじゅんぐらいの術を体得してほしい。
と書きつつも、どう考えてもみうらさん、「ただ気になるものに夢中になってるだけ」ですね。好きなものは、性にまつわる神、即身仏、土偶、天狗、鍾乳洞、菊人形、ゴムヘビ。私も趣味がいくつかあって、仏像、道祖神、キリスト(ほか海外の超有名人)のなぜか日本にある墓など、みうらじゅんとまるかぶりだ。こういうのを先にやられた場合、「ちくしょーこっちのほうが先だ」となって怒りと妬みが炸裂するのに、みうらさん相手だと「しょうがない」と諦めがつくのだった。
この本で扱っているネタは、みうらさんの他の本で出たのもある。しかし使い回し感はなく、またかと思いながら喜んで読んでしまう。これはきっとみうらさんの人徳および文章力および画力によるものなので、他人はマネしてはいけないのである。
週刊朝日 2013年5月3・10日合併号