保阪:科学技術の発展で、武器の性能が格段に進み、戦闘機や弾丸が何キロも飛ぶ高射砲が登場して、非戦闘員が犠牲になるのが当たり前になってしまった。そういう国家総力戦も第二次世界大戦で繰り返されます。

池上:ドイツにおける二つの大戦の連結でいえば、第一次世界大戦の戦後処理、いわゆるベルサイユ体制によってフランスなど戦勝国から1320億マルクにおよぶ莫大な賠償金を請求されました。ドイツは、それを払うために紙幣を増刷してハイパーインフレになってしまった。結果的にドイツには、いわば被害者意識が生まれます。先ほど「ドイツは戦争に負けた自覚がなかった」という話がありましたが、第一次世界大戦の結果、ドイツの人たちは「なんで我々がこんな目に遭わなければいけないんだ」という鬱屈した感情を持つようになった。その時、ヒトラーが「ドイツの生存圏が必要だ」などと叫んで登場した。その憂さ晴らしのような言葉が受け入れられてしまったわけですよね。

『歴史道 Vol.22 第二次世界大戦の真実』から抜粋

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