正直、そこに突入するにはかなりの勇気が必要だったはずなのです。だけどそこに挑み、とんでもない奇跡を起こした。
その大成功の勝因の大きな一つが、Adoです。Adoがウタとして歌うシーンが何度も出てくるのですが、楽曲は映画用に作られた歌です。とてつもなく難しい歌ばかり。それを見事にウタとして歌いこなす。それが圧巻&感動です。
有名なアーティストが歌唱シーンのあるアニメの映画に参加するパターンはありますが、正直、そのシーンを見て歌声を聞くと、その歌手の顔が浮かんできてしまう。
ですが、Adoは顔出ししてないですよね。だから、Adoの歌でも、Adoの顔を思い浮かべず、そこにはめちゃくちゃ歌のうまいウタがいるのです。世界中を熱狂させるという設定も納得の歌。いや、本当にこれを出来るのはAdoしかいないんです。それが奇跡です。
Adoがウタとして歌っている。歌を演じながら歌っている。これ、どうやって歌を収録していったんだろう。映画を見て歌を改めて聞くと、とんでもない力量だと思ってしまう。
ネットでAdoの年齢を見ると、19歳と出てくる。令和の歌姫Adoが、平成に誕生した大ヒット漫画「ONE PIECE」と手を組み、新時代の扉を開けた。
僕は「ありそうでないもの」が世の中に大ヒットするとよく言っていますが、すでに大ヒットしている漫画が、新たな挑戦をすることで、ありそうでなかったものを作り出す。
新たに挑んだ先に起きている奇跡に、色んな涙が出てしまうんだよな。
興行収入も3日で22億円を超えたと聞きました。もうこのまま突っ走って、「FILM Z」の記録を抜いてください。抜くでしょう。気持ちいい。
この「ONE PIECE FILM RED」により、Adoも歌手として、新時代のDIVAとして、さらに駆け上がるでしょう。
ここ数年、「ONE PIECE」見てないんだよな~という方こそ、ぜひ、いきなりこの映画を見てほしい。いい夏過ごせます。
■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。原案・脚本を担当した「運命警察」(テレビ東京)がOA中。