自衛隊では過去に、海上自衛隊の護衛艦でいじめによる自殺事件があった。また、航空自衛隊ではセクハラを受けたと訴えた原告の女性自衛官が札幌地裁で勝訴した事例もある。同席した議員らは、これら過去の事例を挙げたうえで「ハラスメントは人権の侵害である。改善するために、大学などにもある第三者委員会をきちんと作るべきだ」と主張し、自衛隊内部での解決に頼るのではなく、弁護士などを入れた外部検証の仕組みをつくる必要性を訴えた。
署名と同時に提出した「自衛隊内におけるハラスメントの経験に関するアンケート」には、自衛隊経験者146人の声が集まった。年齢は、10代が1人、20代58人で、30代46人、40代29人、50代10人、60代2人だった。性別は女性が82人、男性58人、無回答が6人。陸上自衛隊が101人と多く、海上自衛隊は15人、航空自衛隊は17人、陸上・海上の両方が1人、防衛大学校が1人、防衛省事務官が2人、防衛局が1人、「明らかにできない」が6人いた。
被害の内容はパワハラ101件、セクハラ87件、モラハラ38件、マタハラ17件、その他10件。複数のハラスメントを受けた人は78人いた。そのうち「誰にも相談していない」と答えた人は31人で、全体の21%を占めた。周囲に相談したことにより、解雇や降格、減給、不利益な配置転換など「不利益な扱い」を受けたケースは12件あった。また、ハラスメントを認められなかったという事例が31件。ハラスメントがあったことを曖昧にされた事例は51件だった。
■殺害をほのめかす脅迫や誹謗中傷も
一方で、アンケートには五ノ井さんを脅迫する内容も含まれていた。
「自衛官にはハラスメントがない。嘘の情報を流すのはやめてください。止めないなら、殺すぞ」
こうした脅迫を受け、五ノ井さんはどう感じたのか。AERA dot.の取材に胸中を明かした。
「殺害予告を見たときには本当に怖かったです。今日もここ(防衛省)に来るまでに、後ろから誰かに刺されるんじゃないかと思い、周囲を警戒していました。今は実際に襲われることも想定して、(相手を)どう投げ交わすかイメージトレーニングをしています」
五ノ井さんはSNSのコメントやDMでも誹謗中傷を受けているという。
「誹謗中傷を受けて亡くなる人もいます。受け手の気持ちを考えてほしいです」(五ノ井さん)
【自衛隊セクハラアンケート・報告書】ハラスメントを受けたと回答した自衛隊経験者たちの悲痛の声(https://bit.ly/3e04GFJ)
(AERA dot.編集部 岩下明日香)