当初、国葬にかかる費用については、2億5千万円程度と発表された。ただ、ここに警備費などが含まれておらず、もっと膨れ上がるはずだという批判が高まった。これに促される形で政府が追加発表した費用は、警備費に8億円、接遇費に6億円など合計で16億6千万円と修正された。
「追加の発表でも、計上されている費用はあくまで概算です。国葬への参列国、参列者によっては、まだ追加費用がかかることも考えられ、発表された数字よりアップする可能性はありますね。それでなくとも、安倍元首相の銃撃事件で、要人警護は厳重に、より人をかけてやることが決まっていますから」(前出・外務省幹部)
岸田首相の耳にも国葬への批判の声は入っている。
国葬の概要は8月31日に開催された「故安倍晋三国葬儀 葬儀実行幹事会」で決定された。そこでは、安倍元首相への「弔意」の表し方について、岸田首相が務める「葬儀委員長決定」として、
<故安倍晋三国葬儀の当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする>
と発表された。実は当初、岸田首相はこの「弔意」について閣議決定しようとし、その案まで作成していたという。
だが、世論の反発が強いと察して、一段階、落とす格好で「葬儀委員長決定」となったというのだ。
岸田首相は、不人気な「国葬」の強行によって、さらに追い込まれかねない。
「衆院、参院選で連勝。安倍元首相という大きな存在がいて、何かあっても『安倍政権のツケ』でごまかせ、強運だった岸田首相だが、安倍元首相が亡くなり、打つ手がすべて、マイナス方向になっている。そして急速な円安、コロナにも歯止めがかからず景気は後退するばかり。岸田首相がかかげる新しい資本主義もまったく出てこない。これまで『聞く力』が売りだったが、聞きっぱなしで何もしていない。このままなら、『聞きっぱなし退陣』になりかねません」(自民党関係者)
このままいけば、
「強引な『旧統一教会解散』を打つか、誰かに後を託して退陣もありえる」(自民党の閣僚経験者)
政局は風雲急を告げつつある。
(AERA dot.編集部・今西憲之)