「中国ではまだ知られていない、日本の少しマニアックなサブカルチャーを紹介しようと思ったのが書店をはじめたきっかけです。ところが、ふたを開けたら彼らはほとんど知っていました。よく売れるのは寺山修司、荒木経惟、日野日出志、丸尾末広など。漫画はなぜか恐怖系のグロいものが人気です」

 Tさんは昭和人気について、中国の同時代に比べると圧倒的にコンテンツが多いこと、オーバーグラウンドとアンダーグラウンド、インディーズなどが多様につながっていることなどが、中国の若者たちの好奇心をあおるのだろうと分析する。最近は興味が平成に移ってきている、とも。

「ただ、廃虚観賞、ヤンキー文化(タケノコ族、聖子ちゃんカット、なめ)、プロレスなどは彼らに刺さっていない。同じ昭和文化でも伝わるものと伝わらないものがあって、選別されていると感じますね」

カメラ市場で人気の商品
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 誰かに見せるためのもの、派手で映えるものよりも、自分の心の中や生活を豊かにする文化が選ばれているということだろうか。

 休日、レコードに針を落とし、好きな本のページをめくる……。その時間と、そのときの心の動きは多分SNSには残せない。どの世代よりも忙しく、ストレスにさらされているという中国のZ世代の心のなかが、少しだけ見えた気がした。

(上海・萩原晶子)

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