10月19日、東京・渋谷のコンサートホールに、数百人のウクライナの人々が集まった。目的は、ウクライナを代表する音楽グループ「KAZKA」のライブだ。
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ロシアによるウクライナ侵攻後も、国内外でコンサート活動を継続しているKAZKA。今回の来日は、KAZKAサイドからの「ウクライナから日本に避難している方々、在日ウクライナのみなさんを元気づけたい」という依頼を受け、費用を「全心連ウクライナ『心のケア』交流センター」が請け負うことで実現した。
■KAZKAはウクライナの国民的スター
観客の多くは女性と子ども。ソロチカ(ウクライナの伝統的な刺繍)模様のワンピースやブラウスを着た女性も目に付く。KAZKAが登場すると会場は大きな拍手で包まれた。
KAZKAは積極的に観客とコミュニケーションを取りながら、約1時間半のステージを繰り広げた。女性への賛歌として制作され、YouTubeだけで4億回以上再生されている代表曲「プラーカラ(泣いた)」のほか、伝統的な民謡、国家なども披露。会場に集まった人々は国旗をかざしながら楽しそうに踊り、久しぶりのウクライナ語の歌を堪能していた。
空襲警報が鳴り響くウクライナの町や、大統領演説の実際の映像を取り入れたミュージックビデオで、アメリカをはじめ世界でも話題となった楽曲「I AM NOT OK」も印象的だった。
ロシアによるウクライナ侵攻後、国内外のニュース・報道を通して“勇敢に戦い続けるウクライナの人々”というイメージが広く流布しているが、この楽曲は“私(たち)は大丈夫ではない”という思いを率直に歌っている。「I AM NOT OK」が披露されると、観客は椅子に座り、じっくりと歌に耳を傾けていた。この曲に込められた切実なメッセージは、祖国の平和、大切な人への思いと直結しているのだと思う。
■なぜ、戦禍の中、音楽活動を続けるか
コンサートの後、KAZKAのボーカル、オレクサンドラ・ザリツカさんに話を聞くことができた。