80年代のオシャレな世界観を音楽や映像、衣装に至るまで一貫させ、アイドルイベントでは常に異彩を放っているEspecia。10月4日 杉本暁音の脱退公演が大阪CLUB VIJONにて開催された。
<6人直立不動で並んで「消えないで消えないで いてよ」>
8月31日の脱退発表から1か月強……いよいよやってきてしまった別れと旅立ちの公演は、昼からのスタートにも関わらず超満員。ゴキゲンなアーバンブギーファンクからメロウなR&Bバラードまで、いつものようにアイドル現場らしからぬダンスミュージックで攻め立て、杉本暁音も脱退公演だからと言って悲しい表情を見せることなく、過去最高のパフォーマンスを目指してひたすら歌い踊り続ける。しかし終盤、かつて先輩アイドルグループ BiSが脱退するメンバーへの餞として歌っていた「My Ixxx」のカバーを6人直立不動で並んで「消えないで消えないで いてよ」と歌ったあたりから、徐々にムードは変わっていった。
<これからもどこかで出会ったりしたらまた普通に笑って……>
自身のイメージカラーである緑色のサイリウムが光り輝く中、杉本暁音はラストメッセージを届ける。「今日最後なんですけど、何にも考えてきてなくて(笑)このライブ終わってから感じたことをそのまま言おうと思ったんですけど……Especia入って2年半ぐらい経つんですけど、最初の頃は曲もまだなくて、やっと「きらめきシーサイド」とか「ナイトライダー」が出来て……(中略)2,3人のライブが普通だったんですけど、(でも私は)その2,3人の顔も見れなくて、前向いて喋ることも出来なかったのに、今では「格好良いと思ってほしい」と思ったり「観ててほしい」と思うようになって。その場所その場所に来てくれたみんながいるから今があるし、すごく感謝しています」
「私の夢は……最初レッスンに通っていたんですけど、歌とダンスが好きだったんですけど、そういうタイプじゃなくて、前に出れないから「絶対無理だよ!」って思ってたんですけど、オーディション受けて、2,3人の中でずっとライブしてきて、今はみんながこうやって「卒業……脱退する」って言ったら衣装の色のサイリウムとか持ってもらったりとか、お花も外にあったのを見たし……ライブあるごとに差し入れとかプレゼントとかお手紙とかもくれて、それは嬉しいんですけど今でも実感がなくて。……まだまだもっともっとお返ししたかったなっていうのはあるんですけど……自分で選んだことだし」
「正直に言うと、大勢もすごく嬉しくて、どんどん上を目指さないといけないんですけど、私はもっともっとひとりひとりの顔が見たかったし、そうやって伝えたいと思っていつもライブとかやってきたからちょっとでも伝わってたらいいなって思うんですけど……。関係者さんとかに迷惑をかけたこととかもあると思うし、メンバーとかにもすごくあると思うんですけど、すごくそれ以上に感謝しています。これからもどこかで出会ったりしたらまた普通に笑って、また「おぅ」って言えるような関係でいたいと思ってます(笑)。本当に、本当に感謝しています。ありがとうございました」
<それでも笑顔で「バイバイ」と暁音が歌うシーン>
そんな不器用ながらも彼女らしい感謝の言葉を受け、ライブは「ナイトライダー」「FunkyRock」「きらめきシーサイド」と思い出深いナンバーの畳み掛けへ。汗だくになって歌い踊る杉本暁音、泣きながらも6人での最後のパフォーマンスにエモーションを乗せる各メンバー、それに全力で呼応するペシスト(Especiaファンの通称)。脇田もなりが「じゃあもう君の事一生離さないんだよ」と暁音の背中越しに歌い声を詰まらせ、それでも笑顔で「バイバイ」と暁音が歌うシーンは、多くの人の涙を誘った。
メンバーやペシスト、自身の写真がプリントされた等身大パネルたちに見送られ、杉本暁音がグループから去ったその日の夕方。5人体制のEspeciaは同所で全国ツアー【Mucho GUSTO Especia 2014 Tour】を開幕。全メンバーが緑色のパーツを取り入れた新衣装で登場している。
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada