
だが2月13日現在、累計の興行収入は9億5319万7920円に。「ムトゥ」の記録を大きく塗り替えた。
映画がロングランヒットになるには、リピーターが続出することと口コミが必須だ。
「ムトゥ」で「それまで見たこともなかった世界を知ってインド映画のファンになった」と言う会社員男性(53)は、
「今回一番魅了されたシーンは、インド映画らしさの象徴ともいえるダンス。二人の主人公が白人相手に仕掛ける『Naatu Naatu』というダンスは強烈でした。ただ、このダンスもあくまで見どころの一つ。3時間という長さも忘れるほどですが、長さがあるからか前半で描かれる物語の伏線を後半できちんと回収してくれるのでスッキリ。また見にいくつもりです」
「ラージャマウリ監督のファン」と言う50代無職の女性も、
「期待通りの痛快作でスッキリしました。この映画は(性別にかかわらず)友人たちの間でも評価が高く『絶対見たほうがいい』と薦められた。前作の『バーフバリ』を見ている人ならみんなこの映画を見るのでは」
先の男性も、インド映画好きの上司に本作を薦めたと言う。

■語らずにはいられない
「観客を喜ばせるためにありとあらゆる工夫をてんこ盛りにして、娯楽性を極めたラージャマウリ作品」(加畑さん)は、見たら語らずにはいられない。
もっとも監督自身は、本作が世界中でヒットした理由を「わからない」と言う。ただ、この映画で一番見せたかったことをこう話している。
「私は感情を全面的に強く表現したい。例えば、観客を笑顔にするのであれば、微笑みではなく笑ってほしい。称賛するのであれば、ただパチパチと拍手するだけでなく、大声を上げて興奮してほしい。そういったものを届けたいと思っています」
その思いは間違いなく、日本の観客にも届いている。(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2023年2月27日号