ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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僕にとってタケノコは特別な存在です。育ての父が「竹之助」で。母から「タケ」って紹介されて、僕もそう呼んでいました。それがやがて「パパ」に変わっていく、っていう素敵な話があるわけですけど。つまり僕は「タケの子」なんです。子どものころ、母がタケノコご飯を炊くたびに、父が「お前はタケの子なんだから残しちゃだめだぞ」って。で、「共食いだぁ」って笑わせてくる。しかも弟が友之だから、「友之も共食いだあ」なんて。父のダジャレが連発して、家族で笑い合うのがお約束の家族だんらんでした。展開はいつも同じなんだけど、タケノコを見るとそれを聞きたくなるんですよねぇ。
実は、子どもとしてはそんなに好きな野菜じゃなかったんです。地味だし、あんまり味もないし。でもやっぱり「タケの子なんだから食べた方がいいよな」って思っていました。今でも、おせちなんかに入っているタケノコを僕がつまんで、「タケノコ残すと罰が当たるから」なんて言いながら食べると、タケの孫である僕の子どもたちも含めて家族全員が「あははは」って、温かい雰囲気になります。
※AERA 2020年3月16日号