誕生から50年。いつの時代も老若男女問わず愛されてきた猫型ロボット、ドラえもんがAERA表紙に登場。長年制作に携わってきた、漫画家のむぎわらしんたろうさんがドラえもんの魅力を語った。
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「ああ、こんなときにドラえもんがいてくれたなら……!」
これまでに一体どれだけの人が、心の中でそう願ってきただろう。
1970年に漫画連載が始まって、今年で50周年。100年以上先の未来から、タイムマシンに乗ってのび太のもとにやってきた猫型ロボットは、世界中の子どもたちに愛されるキャラクターに成長した。作者は『パーマン』『キテレツ大百科』など、数々の名作漫画を生んだ藤子・F・不二雄だ。
「F先生は変わったおもちゃが好きで、よく仕事場に持ってきました。怪獣の口からピューッと舌が飛び出すやつとかね。ほかにも鉄道模型、プラモデルとか、いろんな物に興味を持たれていましたよ」
藤子のもとで最後のチーフアシスタントを務め、共にドラえもんの漫画を創り上げてきた漫画家のむぎわらしんたろう氏は、
「そうした物への好奇心と『あったらいいな』というF先生の想像力が結びついて『ひみつ道具』が生まれたのでは」
と語る。
今年、公開予定の「映画ドラえもん のび太の新恐竜」にも、一つのチョコを分け合って食べれば、どんな生き物とでもすぐに友達になれる「ともチョコ」というひみつ道具が出てくる。
「F先生がドラえもんを描く上で、いちばん大切にしていたのは、『読者の子どもにわかりやすい』こと。キャラクターがいま、どこで、何をしているのかが、小さい子が読んでもすぐにわかるように漫画を描いていました。それは、ひみつ道具も同じで、どんなに複雑な道具であっても、必ず一言でわかりやすく説明するように、毎回苦心されていましたね」
ひみつ道具を使えば、時代も人種も、生物と無生物の壁も越えて、わかり合える。そんなテクノロジーの根底に流れる、作者の優しさに触れた気がした。(ライター・澤田憲)
※AERA 2020年3月16日号