増え続けている空き家問題に一石を投じる動きが起きている。不動産業者が「売れるわけない」とさじを投げたボロボロの家が、売り手と買い手を結ぶサイトで売れるという事例が相次いでいるのだ。AERA2020年2月24日号では、中古住宅の新潮流を紹介する。
* * *
「親や親戚が遺した家の活用法は住むことだけではありません」
そう話すのは、不動産売買サイト「家いちば」(東京都渋谷区)の代表で1級建築士の藤木哲也さん(50)だ。家いちばについては、後ほど詳述する。
「賃貸、シェアハウス、民泊など活用法は様々。地方の古民家ならレストランとして貸し出すことも考えられるでしょう。家は、親たちが残してくれた大事な不動産です」
藤木さんは以前、こんな例に関わった。東京都豊島区に築56年の一軒家を持つ80代の男性が亡くなり、60代の女性が相続した。売れてもたいした儲けにならない可能性もあったが、当時30代だった女性の息子が、活用したいと訴えた。親子での話し合いののち、1千万円をかけて改修し、現在民泊用の物件として使っているという。
「1泊あたり7千円から9千円で、多い月は月額70万円、閑散期でも月額20万から30万円の収入があります。稼働は7割前後ですが、それでも投資利回りとしては20%を超えています。住もうとする人にとって築年数は重要ですが、宿泊する人からすれば、設備さえ整っていればさほど重要な問題ではありませんから」(藤木さん)
相続税を支払っても、物件を一から買うよりはずっと安く手に入れることができる。
「親や祖父母世代がローンを払いせっかく積み上げてきた資産を全部処分し、次の世代がまたローンでゼロから家を買う。そんな循環にはそろそろストップがかかってもいいのではないでしょうか」と藤木さんは語る。
日本で空き家が増え続けるのは、中古住宅の売買が低調なことも一因だ。
国土交通省が作成した資料「我が国の住宅ストックをめぐる状況について」によると、中古と新築を合わせた全住宅流通量に占める中古のシェアは、2018年で14.5%。これは、欧米諸国の6分の1~5分の1程度の水準だ。アメリカでは既存住宅流通が81%、イギリスでは85.9%を占める。アメリカでは、標準的な生涯の住み替え回数が6~7回と言われる。