イヌに対して、「人の気持ちがわかってるな」と感じた経験をもつ人は多いはず。イヌが人に「共感」できるかどうかを調べた最新の研究がある。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」12月号に掲載された記事を紹介する。
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友達が悲しんでいると自分も悲しくなるし、友達がうれしそうだと自分もうれしくなる。このように、人は親しい仲間同士で同じ感情を抱く──すなわち「共感する」ことができる。
ネズミやサルなどの動物も、じつは一緒に暮らす仲間同士で共感することがわかっている。なかでもイヌは、仲間同士だけでなく、飼い主である人にも共感する。このことは、イヌを飼ったことがある人なら幾度となく感じているだろう。ただし、イヌの共感に関しては、これまで科学的には証明されていなかった。
そうしたなか、麻布大学の菊水健史教授らの研究チームは、イヌとその飼い主のペア13組の心臓の動きを計測する実験を行った。そして、確かにイヌは人に共感するということを科学的に証拠づけたのだ。
心臓は「ドクッ、ドクッ」とリズムを刻みながら、血液を全身に送り出している。このリズムを心拍という。1拍の時間(拍と拍の間隔)は健康な人では1秒弱だが、いつも一定とは限らない。この変化する1拍の時間を正確に計り、その数値をもとに「心拍変動解析(HRV)」という計算をすると、その数値は、気持ちの変化に応じて変化する。例えばHRVの一つRMSSDは、リラックスしているときには長くなり、緊張すると短くなるのだ。
研究チームは、この研究のためにイヌ専用のコンパクトな心拍計を世界で初めて開発。イヌと飼い主両方の心拍を計測できるようにし、飼い主に30分間、休憩をはさみながらさまざまな指示を出した。英文や数字を音読させたり、日本語を英語に訳して読ませたり、暗算をさせ、口頭で答えさせたりと、難易度の違う作業をいくつか行ってもらったのだ。難易度が違えば、飼い主の心にかかるストレスも違うから、心拍の様子に変化が現れる。
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