WBC1次ラウンドを無傷の4連勝と、盤石の戦いぶりをみせた侍ジャパン。メジャーから参加したダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)、吉田正尚(レッドソックス)と共に、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)の活躍は強烈だった。「1番・中堅」で不動のリードオフマンとして打線を引っ張り、1次ラウンドの4試合で14打数6安打、打率.429をマークした。選球眼に優れていることも大きな強みで4四死球を選び、出塁率.579。中堅の守備でもダイビングキャッチで浅いフライを好捕するなど、チームを救った。
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ヌートバーのプレーに魅了されるのは、フォア・ザ・チームの精神が強く感じられるからだろう。常に全力疾走で相手のミスを誘う。韓国戦では3点を追いかける3回に反撃の口火を切る中前適時打。6回に背中に死球を受けた際には相手投手に鋭い眼光を送り、強い口調で言葉を吐いた。熱くなっても、プレーは冷静だ。7回1死一塁で右前打を放った際は、右翼の三塁送球が浮いたのを見て二塁に進む好走塁。圧勝した試合後のお立ち台では「ニッポンダイスキ!ミンナ、アリガトウ!」と叫び、スタンドから大歓声が起こった。
スポーツ紙の記者は、ヌートバーについてこう語る。
「WBCに出場する初の日系選手ということで、楽しみと共に不安があったと思います。でもチームメートが『たっちゃんTシャツ』を作ってくれて歓迎したことに感動していたそうです。日本のために戦える誇りがプレーに前面に出ている。チームメートとも密にコミュニケーションをとってすっかり溶け込んでいますし、ファンの間でも侍ジャパンでトップクラスの人気です。ヌートバーを選出した栗山英樹監督の決断も評価されるべきでしょう」
NPBでプレー経験がなかったヌートバーがWBCのメンバーで選出されたことに、当初は懐疑的な見方も見られた。巨人、エンゼルスなど日米でプレーした野球評論家の高橋尚成氏は自身のYouTube動画で、「サプライズの選出ですごく良かったんじゃないかなと思います」と前置きしたが、「正直、僕は必要があるのかなぁというような選手だと思います。引き合いに出されるとしたら筒香選手とあまり変わらないんじゃないかなという成績なんですよ」、「選手自体としては、決して選ばれるような選手ではないと僕は思っています。日本の外野手のほうがもっといい選手、僕はいると思います」などと持論を語っていた。