スーパーのイオンでは「FISH BATON(フィッシュバトン)」というエコラベル製品だけを扱う売り場を設置。生協系列のスーパーでも、海のエコラベルシールがついた魚製品を売っている。
18年に日本で初めてMSC、ASC認証のサステイナブル・シーフードを使ったメニューを社員食堂に導入したのがパナソニックだ。月1回の提供だが、社員も会社の取り組みを応援しているという。同社ブランドコミュニケーション本部CSR・社会文化部事業推進課長の喜納厚介さんによると、社員の評判は上々。
「サステイナブル・シーフードのことを“サスシー”と呼ぶ社員が多いのですが、『普段は魚をあまり食べないけど、本日のメインメニューがおいしそうだったから選んだらサスシーだった』『サスシーを食べておけば、漁業のサポートもできるんですよね』といった声を聞きます」
人気メニューは、生の魚を使った丼ものや、カキフライなどの揚げ物だという。
「南三陸町戸倉のカキフライ定食は、当社のサステイナブル・シーフードに対する取り組みを社員に発信することで、喫食率49.5%になりました」
サステイナブル・シーフードを導入すると、CoC認証の取得などにより10~15%のコスト増となるという。適正な原価率を維持するためのノウハウと知恵が必要になる。
魚の激減を食い止めるために私たちができることは、普段の生活でエコラベル付き魚製品を買うことぐらいしかない。海外ではウォルマートやテスコなどの大手スーパーでエコラベル製品が並び、マクドナルドのフィッシュバーガーにまでラベルが付いている。
ヨーロッパでもエコラベルの認知度は高く、スイスではアンケート対象者の8割が「知っている」と回答。イギリスでは魚を買う際にラベルの有無と、TAC(水産資源の専門用語で、漁獲可能量のこと)まで気にする主婦もいる。
日本はどうか。漁獲量は世界7位(17年)、水産物の輸入額は世界2位(16年)の魚大国なのに、エコラベルの認知度は約1割。無料のさんま祭りの方が注目されるようでは、意識が遅れすぎではないか。
海外ではそもそも「魚は値段が高いもの」という認識だ。1尾100円の魚にばかり飛びついてきた日本人の感覚を改める時期が来ている。地球規模の長期的利益を考え、まじめな漁業者が捕ったり育てたりした魚に、その価値も含めてお金を出す。私たちが変わらなければ、本当に日本の食卓から魚が消えてしまいかねない。(サステナブル・フードジャーナリスト・浅野陽子、編集部・中島晶子)
※AERA 2019年9月30日号より抜粋
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