
キューバが慢性的なモノ不足に陥っている。オバマ前米大統領による国交回復で一時は経済が上向いていたが、トランプ政権下でのアメリカからの渡航条件引き締めなどを受けて厳しい状況に追い込まれているのだ。しかしそんな中でも、自らの趣味の世界を楽しむべく工夫をこらす若者たちがいた。AERA 2019年9月16日号に掲載された記事を紹介する。
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「私はアニメオタクです」
キューバにいると、こんな自己紹介をする若者によく出会う。日本人とわかると、親しみを込めて日本のアニメの話をしてくれる。皆一様に明るく快活、社交的な印象だ。
2008年からアニメ好きを集めてイベントや勉強会を開いていたエルネスト・ロペスさん(38)はこう話す。
「キューバのアニメファンは、仕事に勉学に励む、活動的な“リア充”が多いんです」
キューバでは国営放送で日本のドラマやアニメが放映されてはいるが、DVDの販売はなく、ネット接続は高額でスピードも遅い。好きな作品を見るためには、USBメモリーをファン同士で回覧し、情報をシェアするのが有効だ。自ずと交流は活発となり、社交性も高まるという。
アニメと共にコスプレも人気だが、衣装や小物を手に入れるのは容易ではない。手縫いしたり、不用品をリサイクルするなどして自作しているという。
ウェートレスのダニエラ・ロドリゲスさん(22)が初めてコスプレをしたのは14歳のとき。コスチュームは基本は手作りだが、作るのが難しいものもある。
「皿洗いして貯めたお給料の4カ月分を、全部ウィッグにつぎ込みました」
と話す。今は毎月新しいコスプレの衣装を作り、イベントに参加する。イベントで出会って意気投合したルイスさん(21)と今年3月に結婚した。
エンリケ・メイヨさん(27)は5年前、アニメイベント「フリーク・ゾーン」を立ち上げた。コスプレコンテストやクイズ大会などがあり、子どもから高齢者まで、毎月平均200~300人、多いときは700人もの参加者が集まる。こうしたイベントは地方でも毎月開催され、各地域の交流も活発だ。