竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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トランプ米大統領から大統領自由勲章を授与されたタイガー・ウッズ選手は、にこやかに演説した/5月6日、ワシントンで (c)朝日新聞社

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 アメリカのトランプ大統領が5月6日、米国の民間人に対する最高勲章である大統領自由勲章をゴルフ界のスター、タイガー・ウッズに授与しました。14年ぶりにマスターズ・トーナメントを制し、頂点に戻ってきたことをたたえてのことです。

 今回のマスターズで衝撃的だったのは、タイガーの完全復活はもちろん、その勝ち方の変化でした。若い頃の彼はとにかくハングリーでパワフル。圧倒的な飛距離で難コースをねじふせて勝つ。

 でも、今回は違った。悟りを開いたような集中力で、一打一打に向き合っていました。最終ホールはこれまでなら、どこからでもバーディーを取りにいっていたイメージがありましたが、今回は淡々とボギー。意外でした。

 タイガーのゴルフ人生は、山あり谷あり。21歳のときにゴルフ界に彗星のように現れ、史上最年少でマスターズを制してから22年、年を重ねたことで、以前のようなパワーで飛ばすこともできなくなりました。スキャンダルや交通違反でどん底にも落ちました。

 なんとかコースに戻ってきても、マスターズには更にパワーアップした「今のビッグネーム」が並んでいます。その中で「今の自分」を受け入れた。そして、今の自分のゴルフで優勝しました。

 ゴルフを今のようなアスリートスポーツに変えたのも、タイガーでした。その彼が、今度はこれまでのパワーゴルフとは異なる、まるでコースと対話し、調和していくような勝ち方の可能性を示したのです。

 タイガーは、本当に純粋で、素直でまじめな人なんだと思います。だからこそ、このような立ち直り方ができたのではないでしょうか。

 この原稿が掲載されている頃は、今季二つ目のメジャー大会「全米プロゴルフ選手権」の結果も出ているはずです。こちらも大変楽しみです。

AERA 2019年5月27日号

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