光明が見えたと期待したのもつかの間、再び袋小路に入り込んだ北方領土問題。駐日ロシア大使が示す返還の条件は、日本には到底受け入れられないものだった。
【写真】ロシアのプーチン大統領との共同記者発表に臨む安倍晋三首相
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昨年11月、1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させることで日ロ首脳が合意し、解決への期待が高まった北方領土問題。だが現在、交渉は再び暗礁に乗り上げている。ロシアは今後どう出るのか。外交官だった父の影響で子ども時代を日本で過ごし、自らも日本勤務4回目で流暢な日本語を操る駐日ロシア連邦特命全権大使、ミハイル・ガルージン氏(58)が80分を超える本誌単独インタビューに応じた。
──4島を巡る問題は解決に向かっているように見えません。
プーチン大統領と安倍晋三首相が交渉を加速化させることに合意した以上、日本では歯舞と色丹を速やかに引き渡すべき、いわゆる2島プラスアルファの解決策を進めようじゃないかという議論が拡大しています。しかし、重要なのは共同宣言全体を順守することです。
そもそも2島のことを書いているのは同宣言の第9条という一部であり、宣言の基本的精神である第1条には「両国の間に平和及び友好善隣関係が回復されること」と明記されています。米国をはじめとする西側諸国がクリミア問題を口実にロシアに対して発動した制裁に、積極的かどうかは別にして、日本が参加しているという事実はこの第1条に合致しているでしょうか。友好と善隣の精神には反していると思います。
──かつての「西側」による制裁に日本が加わっていることが解決を阻害していると?
いま現在、日本の主要同盟国である米国はロシアに対して明らかに敵対的政策を取っています。その米国の軍隊が日本のあちこちに駐留して、ロシアと中国をターゲットにしたミサイル防衛設備を配備していることも事実です。日本からの脅威ではなく、日本に配備されている米軍からの明らかな脅威です。ですから、平和条約締結の環境づくりのためには、我々の懸念を解消すべきです。また、10年前は年間300億ドルあった日ロ貿易が今は200億ドルと、ポテンシャルが完全に活用されていない状況です。経済的にも友好的なパートナー関係を築くことが大切でしょう。