島根県海士町・カズラ島での委託散骨(写真:戸田葬祭サービス提供)
島根県海士町・カズラ島での委託散骨(写真:戸田葬祭サービス提供)
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図版=AERA 2019年3月25日号より
図版=AERA 2019年3月25日号より

 新しい形の埋葬の仕方では「散骨」もニーズが高まっている。自然葬などを手がける葬祭コーディネーターで「くぼた」(東京都府中市)の久保田豊代表によると、15年ほど前から業者が出始め、詳しい統計はないが、海洋散骨を行う業者は100社前後あるという。

【図を見る】くぼたの「委託散骨」の料金は?

 料金形態は業者ごとに異なるが、委託して埋葬してもらう「委託散骨」が価格的には安くなる。

「故人の思いで選択される方が多いのですが、お墓がないので命日のご供養をどうするかといった問題も出てきます。ご遺族にしっかりと寄り添ってくれる業者さんを選ぶことをお勧めします」(久保田さん)

 くぼたでは、東京湾、相模湾を中心に海洋散骨を受け付け、費用は散骨の手続きをすべてまかせて家族は乗船しない「委託散骨」は6万円から(税別、以下同)、8人以上が参加して船をチャーターする場合は25万円から費用がかかるという。

 墓地埋葬法では、墓地以外に遺骨を埋めることを禁じており、近隣住民とのトラブルを避けるために、人骨をまくことを条例で禁止する自治体もある。「海洋散骨」に法的ルールはないが、静岡県熱海市では10キロ以上離れた海域で行うといったガイドラインを定めている。

 自治体の協力を得て無人島が「陸上散骨」の場になっているのが島根県海士(あま)町のカズラ島。大山隠岐(だいせんおき)国立公園内にあり、ユネスコ世界ジオパークにも認定されている。

 2008年から年2回、散骨し、昨年度までに137人が埋葬され、93人が生前予約をしているという。費用は粉骨料込みで26万5千円。委託散骨をすると22万5千円。生前契約すると18万5千円、委託散骨で16万円まで価格は下がる。

 散骨の場は宇宙にまで広がる。5月31日に、アメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられるロケットで「宇宙葬」を行う予定というのは、南海や巨人で活躍した元プロ野球選手で、15年に死去した富田勝さん(享年68)。富田さんの遺志で、5年前から宇宙葬のサービスを開始した葬祭会社「銀河ステージ」(大阪市)の「人工衛星プラン」を選択した。費用は95万円。遺灰は専用カプセルに入れられ、打ち上げ後試算では最長240年間、地球の軌道上を周回する。ほかに、高度100キロを超えた宇宙空間で散骨する「宇宙飛行プラン」(45万円)や、月面まで運ぶ「月旅行プラン」と宇宙の果てを目指す「宇宙探検プラン」は各250万円。これまで17人の遺灰が宇宙に飛び立ち、今年は10人を予定して、俳優の島田陽子さんもすでに生前予約の申し込みを済ませているという。(ライター・村田くみ)

※AERA 2019年3月25日号