高収益を上げ続ける世界最大のネット通販会社アマゾンに、もはや死角はないように見える。だが、その強みこそが今、弱みになりつつある。
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アマゾンは、ニューヨークの金融会社で働いていたジェフ・ベゾスがインターネットの急激な拡大を目の当たりにして一念発起し、1994年に大陸の反対側のシアトルで起こしたネット通販の会社だ。ベゾスの読みは大きく当たった。書籍の販売から始まったアマゾンは、いまや世界最大のネット通販会社になった。
その業容は幅広い。電子書籍端末の「キンドル」、ネットでコンテンツを配信する「プライム」から、音声認識の人工知能(AI)を使った「アレクサ」まで、最新技術を使った製品を次々と売り出してきた。17年には米国で高級スーパーとして知られる「ホールフーズ」を買収し、リアルな店舗にも進出した。9月には時価総額が1兆ドルを超えた。前月にそのマイルストーンを達成した米アップルに次ぐ快挙だった。
米国では、世界中の個人情報を蓄積し、世界の経済や社会に大きな影響を及ぼすようになった米IT大手を、フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグルの英語の頭文字から、FAANG(ファーング)と呼ぶ。
FAANGを代表するようにもなりつつある、アマゾンの強さはどこにあるのか。
それを解くカギは、決算書の中にある。10月末にアマゾンが発表した7~9月期の最新の四半期決算で、37億2400万ドルの営業利益を生み出している。これが本業の儲け。重要なのはその内訳だ。北米事業は大幅な黒字。
だが、日本などを含む国際部門は、3億8500万ドルの営業赤字。埋め合わせるのが、AWSという部門だ。
AWSとは「アマゾン・ウェブ・サービス」のこと。企業向けのクラウド事業を手がけるアマゾンの子会社だ。AWSが20億7700万ドルの営業黒字をたたき出しているおかげで、全体では約37億ドルの営業利益になる、という構造だ。営業利益の半分以上を担っているのはネット上で目立つアマゾン・ドット・コムのネット通販ではなく、企業向けのAWSなのだ。