ジェームズ(ジム)・マティス米国防長官が、とうとうトランプ大統領に愛想を尽かした。「マッドドッグ(狂犬)」のあだ名からは想像できないほど冷静で緻密、バランス感覚に優れ、超党派で人望がある。政権の「安定剤」の辞任が決まったことで、ホワイトハウスが世界の「マッドハウス(狂った館)」になることを防ぐ最後の盾が消滅する。
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12月20日、マティス国防長官(68)はホワイトハウスで、トランプ大統領(72)と面会していた。予定にはない訪問だった。長官が手渡した書簡には、こう書かれていた。
「あなたには、さまざまな課題について、あなたと考えをともにできる国防長官を持つ権利がある。だからこそ、私は今の立場から退くことが正しいと考える」
マティス長官がトランプ大統領に三行半をたたきつけた瞬間だ。辞職願の書簡の内容は今、SNSなどで公開されている。
2019年2月28日に辞任へ――。
いつものように発表は突然だった。マティス長官の辞任は、トランプ大統領が20日夜、自らツイッターで公表した。
「この2年間、国防長官として私の政権に尽力してくれたジム・マティス将軍が、すばらしい功績とともに、2月末で退任する」
1回あたりの文字制限には収まらず、2回に分けてツイートしたトランプ大統領は、マティス長官の功績をこう説明した。
「ジムの在職中、特に新たな戦闘装備の購入で、とてつもない前進があった。同盟国に公平な軍事負担を拠出させようとする私の偉大な支えだった。ジムの尽力にとても感謝する」
政権発足から2年の間に、閣僚や政権幹部の辞任を何度もツイッターで電撃発表してきたトランプ大統領。常に「感謝」と「功績」を記すのを忘れなかったが、それだけ優秀な政権幹部がなぜ辞任するのかの理由については、これまでと同じように言及しなかった。
前日の12月19日、トランプ大統領は、マティス長官辞任の直接の引き金になったとみられる米軍のシリア完全撤退を発表していた。その理由について語ったビデオメッセージも自身のツイッターに掲載している。