ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 びっくり仰天の記事を読売新聞で見つけたのは10月24日の朝刊でした。一部引用させてもらいます。

<経団連会館の23階にある会長執務室。中西が部屋の主になった5月、卓上に初めてパソコンが備えられた。中西は事務局の役員やその部下らに、メールで施策の進展状況などを問う。部屋でパソコンを操る財界総理はいなかった。

 メールを受け取った職員の一人は言う。「最初は本当に驚いた。これが中西さん流だ。主に紙でやり取りしてきた職員の働き方も変えようとしている」>

 この記事、記者はどんなつもりで書いたんでしょうか。「まじかよ、これ」と思ったのか、「いや~改革が進んでてすばらしい」と思ったのか。そしてこの職員が「本当に驚いた」とすると、大多数の読者は経団連という財界のトップ団体がいまだにこんなレベルの集団なのか、とあきれたのではないでしょうか。

 この平成も終わろうかという世の中で、いまだに紙のやり取りが主流って組織が日本の経済界を引っ張っていこうなんてのは冗談にしか聞こえない。中西さんは日立のご出身だし、恐らくパソコンを自由自在にお使いになれるのだろうと思われますが、これを放置してきた状況というのはもう笑うレベルを超えて背筋が寒くすらなります。会長という職がタダのお飾りで全く機能していなかったのか、メールというツール、もっと言うとデータの処理などを含めたIT機能を全く必要としない組織だったのか、いずれかということになります。会長はデータ一つ直すにも全部赤ペンを入れていた……わけですよね。まじですか?

 大体、日本ではいまだにファクシミリという機械が普通にあることにびっくりします。

 先日取引銀行に書類をファクスで送ってくださいと言われて仰天した話を自分のブログに書いたのですが、日本は銀行、役所など、いまだに紙天国なわけです。揚げ句の果て印鑑、と来る。印章のような画像認識はAIにとって得意分野で、いくら銀行の照合係が極めて優秀とか言っても、彼らの目を欺くことはAIであれば非常に簡単。よく偽造問題が出てこないな、と感心しているくらいです。

 我々の仕事ではもはや電話も必要なくなりつつあります。ほとんどメールで済みますし、必要があればスカイプで連絡を取っています。これなら世界中全員で一発で話が終わるのに、日本の大企業はいや、セキュリティーが……とか必ず言い出します。あんたの会社と世界のマイクロソフト、どっちのセキュリティーが上だと思ってるのか、と言いたいところです。我々のように世界中で仕事をしていると日本のITに関する遅れが目について仕方ないのですが、経団連がこれでは仕方ないのかもしれません。

AERA 2018年11月5日号

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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