5年前に全身のがんであることを公表しながらも多くの映画、ドラマで活躍していた俳優の樹木希林(きき・きりん/本名は内田啓子)さんが9月15日、都内の自宅で亡くなっていたことわかった。享年75歳。夫はロックミュージシャンの内田裕也さん(78)で、長女は内田也哉子(42)さん、その夫は俳優の本木雅弘(52)さん。
樹木さんは8月13日に左大腿(だいたい)骨を骨折し入院したが、最期は家族に看取られながら自宅で息を引き取ったという。
樹木さんは昨年、自身の死生観についてAERA編集部に語っていた。その貴重なロングインタビューを再録する。
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アエラの取材依頼に当初は丁重な断りの電話があった。だが「こういう取材は今回きり」の条件で、樹木さんは「なんでも聞いていい」と重い扉を開いてくれた。
「老い」とか「死」とか、そういうテーマの取材依頼がたくさんきて、困っちゃうのよ。何も話すことなんてないんだから。「死をどう思いますか」なんて聞かれたって、死んだことないからわからないのよ。ひとつ(取材を)受けるとキリがなくなるでしょ。だから全部お断りしているんです。映画の宣伝のときは仕方ないけど。
私がこういう取材を受けるメリットはどこにあるの? あなた方のメリットはわかるの。えっ、私の話で救われる人がいるって? それは依存症というものよ、あなた。自分で考えてよ。
死はいつか来るものではなく、いつでも来るものなの、私の場合。全身がんですから。だから仕事も先の約束はしない。せいぜい1年以内。仕事の交渉は留守電とファクスで全部自分でしている。この間も「2年契約で」なんて話が来たんだけれど「とんでもない。よしてください」って言ったの。「そのほうがおカネ的にもいいでしょう?」って先方は言うんだけれど、「2年先(の命)なんて保証できない。持たせようと思うほうが苦しいから勘弁してください」って言ったわ。