●私の活用法(2)
次のファンへ引き継がれるペンライト
大阪府に住む50代の主婦は、娘とお気に入りの男性アイドルグループのコンサートに行くのが楽しみという、ライブのために地方遠征するほど熱心なファンだ。
「コンサートグッズはツアーごとに変わります。たとえばペンライト。スイッチで自由に色が切り替えられるようになっていますが、最近はペンライトの色が曲によってプログラミングされているんです」
どういうこと?
「自分の席に貼ってあるバーコードをペンライトに読み込ませる。すると曲に合わせて勝手に色が変わるんです。客がそれを振ると、客席に人文字が浮かび上がったりする演出です。その様子は会場のスクリーンにも映し出されるし、あとからDVDで確認すると自分がどの辺にいたかわかるから、ライブに参加した感が味わえます」
去年のペンライトを持ってくる人もいるが、それでは曲に合った色が出ない。一体感を味わいたいファンは、やはりその年のペンライトが欲しくなる。
「会場で購入すると2500円ぐらいします。うちみたいに親子で行くと、ペンライトだけで5千円ですから」
「ツアーはひと月ぐらいかけて順繰りに日程が組まれています。なので、初期のライブに参加したファンは、使い終わったペンライトをメルカリに出品する。少しでも安く手に入るのは助かります。そして、ライブが終わったら自分たちも即出品。あとの日程に行く人が買ってくれる。少しでも売りやすくするために、ライブ会場の演出ではじけて飛ぶキラキラのテープを拾って、一緒に出品している人もいます」
ちなみにキラキラのテープには、ツアー名や会場の地名、メンバーの名前が印字してあるので、立派にコレクターズアイテムになっているという。
ツアーでは、会場限定でメンバー一人ずつの待ち受け画面がダウンロードできるようになっていることもある。それを手に入れるには、CDの帯の裏にあるシリアルナンバーが必要だ。一度入力されたシリアルナンバーは二度と使えないし、画像を全部手に入れようと思ったら、人数分のCDが必要ということになる。しかし、CDを買う人の中には待ち受け画面に興味がない人もいる。
「帯だけを300円で出品している人も結構います。私も遠征先で待ち受け画面をダウンロードしたくて、帯だけ買ったことがあります」
コンサートグッズのハイテク化が、ファン同士の新しい取引を生んでいる。(ライター・浅野裕見子)
※AERA 2018年9月10日号より抜粋