──沙織は、思った通りの自分になれないもどかしさを抱えながら、自分らしく生きるすべを見つけようともがきます。そんな沙織に共感できる部分は?
多かれ少なかれ、誰もが「こうありたい自分」と「うまくできない自分」との間で悩んでいるのではないでしょうか。みんながみんな、やりたいことをやれているわけではないですから。私にも、周りと比べて焦った時期がありました。特に20代前半の時期は大変で、すごく無理をしていた部分があったと思います。でも、30代になった今は、いろいろなことが一気にラクになりました。人と比べて頑張る必要はないんだ、私は私でしかないんだと、きちんと自分に向き合えるようになったから。自分は何がしたいのか、自分ってなんだろうと本気で考えて、答えを見いだすことができているので、迷うことはなくなりました。自分は芝居が好きで役者をやっていて、情熱をかけられるその仕事が続けられる環境にいられるだけでもありがたい。まだまだ未熟な部分はあるけれど、芝居ができるだけで、とにかくもう楽しくって幸せです。
──そう思えるようになったきっかけがあったのでしょうか?
いろいろなことを経験し、失敗や苦労を乗り越えて、自然に「自分は自分」と考えられるようになりました。今は、情熱を持って一つひとつの仕事を全力でやっていくだけ。あとは自分がどこまで芝居を頑張れるかだけの勝負なので、常に挑戦の毎日です。でも、それが楽しいし、ありがたいし、恵まれているし、本当に感謝しかないですね。
──これからも、楽しくなっていく予感がありますか?
はい、今から40代が楽しみです。私、人はどんどん悩んでいいと思うんです。悩めば悩んだ分だけ、答えが見つかるはずだから。たくさん悩むことは、自分を成長させてくれる大切な経験になると思う。今も「どういうお芝居がいいのかな」と悩んで、考えすぎて、わけがわからなくなってしまうこともしょっちゅうなんです。それで結局、一回全部忘れてみたりして(笑)。そんな試行錯誤を繰り返してはいるけれど、答えは必ず自分の中にあるはずなんです。だから、悩んでも、私は人に相談することはほとんどないですね。他人に何を言われても、結局答えは自分で決めるしかないですから。
(取材・構成/ライター・まつざきみわこ)
※AERA 2018年7月2日号