得意なはずの外交も、(1)日米関係は鉄鋼・アルミの関税問題でトランプ大統領が「いつまでも米国を利用できると思うな!」と言っているように、緊密な関係でなくなっている(2)北朝鮮問題は「米・中・韓」のカヤの外に置かれている(3)日ロ関係は経済援助のみ取られ、領土問題は一歩も前進しない。結局、外交政策も破綻している。

 沖縄についても、先日お別れの会が開かれた野中(広務・元自民党幹事長)先生は、「温かい心で接していただきたい」と言っておられた。しかし安倍政権の対応を見ていると、野中先生の気持ちを理解しているようには思えない。本当に安倍氏の心の奥まで響いたのか。

 政治家は次の世代に対し、責任を持たなければならない。そのために経済政策として、(1)財政の立て直し(2)金融緩和の出口戦略(3)税と社会保障の一体改革──この3点を喫緊の課題として取り組まなければならない。社会保障も受益と負担のギャップを埋め、現在の「高福祉・低負担」から「中福祉・中負担」を目指すべきだ。

 外交も、安全保障とは敵を減らして味方を増やすことであり、中国、韓国など近隣諸国との関係改善に一日も早く取りかからなければならない。

 目先の人気取りに傾き、長期的な視点を忘れたままではいけない。安倍政権は、よりよい社会を次の世代へバトンタッチすることを最終目標にすべきである。自分の選挙やポストのことばかり考えているとすれば、政治家にとっては「死」にほかならない。

 いずれにせよ、後任の総裁に誰がなっても、皆で全力で支えていくしかない。(構成/ジャーナリスト・村上新太郎)

AERA 2018年5月14日号