2年連続でテストに参加した戸田第二小学校も、意外な結果が出た。小高美惠子校長は言う。
「本校は学力調査では全国平均を上回っていたので、RSTも高い点数を出すと思っていたのですが、思った以上に低かった。特に推論とイメージ同定が弱かったですね」
同校も学力テストの結果とリンクせずに、なぜこのような成績が出たのか分析できないでいる。ただし現場に立つ教員として、感覚的に理解できる点もある、と狗飼教諭は言う。
「たとえば、コミュニケーション力が足りていない児童の推論の点数が低いなど、能力や性格的な面が、RSTの結果に表れているような印象を受けました」
子どもの読解力やコミュニケーション力に異変が起きている。その原因は何なのか。気になる調査結果がある。カギとなるのは、10年以降急速に普及し、内閣府の調査で今や青少年の約6割が使用しているスマートフォン。これが、言語機能やコミュニケーション機能をつかさどる脳の前頭前野に悪影響を与えている可能性があるというのだ。
調査を行ったのは、ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修者としても知られる東北大学の川島隆太教授だ。仙台市立小中学校の児童・生徒7万人を対象に追跡調査した結果、スマホの使用で明らかに学力が低下し、使用を中止するとまた学力が向上するということが分かった。
なかでも、LINEなどメッセージアプリの影響が大きく、17年度の調査では、LINEなどを全く使用していない生徒の4教科の平均偏差値が50.8なのに対し、使用時間の長さに応じて偏差値は下がっていき、1日4時間以上使用している生徒の偏差値は40.6。実に10以上の差がついてしまった。川島教授によると、学習時間は十分にあっても、友人とメッセージをしながら……といったマルチタスク化が進むことで集中力がそがれ、勉強の効率が落ちてしまったことが要因の一つと考えられるという。
さらに恐ろしいことに、スマホを長時間利用すると、読書をした時に活発に働く前頭前野に、安静にしている時よりもさらに働かなくなる「抑制現象」が起き、健常児でも言語機能の発達に遅れがでることがあるらしい。この抑制現象はテレビやゲームを長時間利用した時にも起こるという。
「スマホはお酒と同じで、『利用時間を1時間以内に留める』など、自制心を持って利用すれば悪影響は出ないことも分かっています。ただ、それは大人でもかなり難しいことだと思います」(川島教授)