築地市場の一日が始まるのは深夜。皆川さんは終電で出勤し、すし店や居酒屋などの取引先からの受注内容を確認してから、ターレーを操って場内に買い付けに出向く。その量は、

「アジ230匹なんていうこともありましたね」(皆川さん)

 特別に、ターレーの荷台に乗せてもらった。

 運転席と荷台の境にある「ついたて」を握りしめ、いざ発進。風を切る感覚が心地いい。決して広くはない入り組んだ市場の通路だが、小回りが利くターレーならスイスイ移動できる。

 場内での運転は労働安全衛生規則内の「安全衛生教育」を修了すればいいだけだが、公道を走るには「小型特殊免許」が必要だ。早朝の場内は暗く、観光客とターレーが衝突したこともあると聞くと、ついたてを握る手に力が入る。カーブのときは遠心力が直接身体にかかって、うっかりすると持っていかれそう。荷物が多いと遠心力はさらに増すだろう。進路を予想しては、足を踏ん張った。

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