試合部分のトレーナーのプロレスOBからは、悔しい時にリングを叩くなど大きな動きで感情を表現することも学んだ。
「今は、頑張ったり熱くなることがかっこ悪いと思われる時代。そんな時代に私たちアイドルもプロレスも自分の感情をむき出しに、ダメなところも見せたくないところも見せている。そこが私は好きです」(宮脇さん)
●人形から人間になった
ドラマにとどまらずアイドル、特に女性アイドルが実際にプロレスラーになるケースがここ数年急増している。その先駆者が2010年にプロレスデビューしたグラビアアイドルの愛川ゆず季さん(34)だ。彼女にとってプロレスは、自分を「人形から人間にしてくれた」存在だった。
プロレス入り直前はブログのアクセス数を稼げなければ引退といった企画をやるなど「崖っぷちアイドル」といわれていた。
「デビューしてすぐ、雑誌の表紙に出たいという目標を何の努力もせず実現してしまった。その後は、仕事をもらっても出たとこ勝負。がんばれ、と言われるけど、何をがんばればいいのと思っていました」
そんな時、事務所からプロレス入りを勧められ、初めて「打ち込める目標」を手にした気がした。デビュー後は女子プロレス団体「スターダム」に所属。アイドルだからと思われたくなくて「明日のことを考えない、捨て身のプロレス」を心掛けた。体はきつく、家に帰ってコスチュームのまま寝てしまうことも。ベテランのダンプ松本に試合で「ボコボコ」にやられ、実家に帰ってしまったこともあった。
●もがいてる姿隠すなと
「技術では他の選手に簡単に追いつけないので、わかりやすい努力をしようと思いました。練習も全部参加して移動も他の選手と一緒のバスに乗って、会場の椅子出しもしたし、仕事も両立して、空き時間は一切ないようにしてました」
そのファイトスタイルはファンの心をつかみ、プロレス界では最も権威のある「プロレス大賞」女子部門を2年連続で獲得した。愛川さんも、プロレスは「人間の根本にある喜怒哀楽すべての感情を出して勝負したい人たちの集まり」と表現する。