国民的着せ替え人形「リカちゃん」が今年、誕生50周年を迎えた。世代を超えて愛されてきた理由は何か。その“魔法”を探ってみた。
【写真】時代を映し出してきた、歴代のリカちゃんとボーイフレンド、ママ、パパ人形が勢揃い!
「3人合わせて150歳。こんな日が本当に来るなんて──。25年前は、50歳の自分なんてまったく想像がつきませんでした」
黒須美央さん(50)、佐々木美佐子さん(49)、石井あづささん(49)の3人は口をそろえて言う。リカちゃんが誕生した1967年生まれ。今年50歳になる。新卒で入社した食品メーカーの同期で、今はそれぞれ別の道を歩んでいるが付き合いは続いてきた。彼女たちをつなげてきたもののひとつにリカちゃんがある。
「私がふたりを誘ったような気がします」
と佐々木さんは言う。92年、リカちゃん25周年を記念して「2017 プレミアムリカちゃん」が発売された。限定2500体で値段は2万5千円。決め手となったのは、25年後の「リカちゃん50周年記念パーティー招待状」がついていることだった。
「仲のいい私たち3人が25年後、どこで、どんなふうに暮らしているかはわからないけれど、25年後、3人で一緒に会えるから買ってみない?って。ふたりに声をかけました」(佐々木さん)
タイムカプセルみたいな感覚。半信半疑だったが、その案内が昨春届いた。石井さんは言う。
「感動しました。本当に実行されるんだって。覚えていてくれたんだな、と。ほかにどんな人がこの人形を買ったのか。パーティーが楽しみです」
着せ替え人形の代名詞ともいえる「リカちゃん」が、今年50周年を迎えた。3月下旬、東京・松屋銀座で開かれた記念展の初日には、開店前から列ができ、会場には親子2代、3代で訪れる人たちの姿が目についた。
●少女マンガがモチーフ
<名前は香山リカ。小学5年生の11歳。父はフランス人の音楽家。母は日本人のデザイナー>
少女マンガをモチーフに、物語の設定もつけて世に送り出された。以来、50年。これほどの長きにわたってリカちゃんが愛され続けてきたのはなぜか。そこにはどんな人を惹きつける魔法があるのだろう。
リカちゃん誕生時、小学1年生だった精神科医の香山リカさん(56)は当時の衝撃を次のように語る。
「そのころの着せ替え遊びは、雑誌の付録についてくる紙製の人形などでしていたので、プラスチック製のリカちゃんは新鮮でした」
フォークやナイフ、ダイニングテーブルなど、一歩先を行くライフスタイルもまぶしくて、次々と商品が欲しくなった。
「学校の成績が良ければ買ってあげる」と親は言い、商品欲しさにせっせと勉強したという。
「いま振り返ると高度経済成長期らしい、大量消費の先駆けだったと思います」(香山さん)
50年間累計の販売数は6千万体を超える。タカラトミーのリカちゃん企画部マーケティング課長の椎葉彰さん(40)は言う。
「リカちゃん誕生前は外国製の人形ばかりでした。『日本の女の子が身近に感じられる人形』をコンセプトに開発し、一貫して寄り添ってきました」