中国、トランプ、北朝鮮、日本を取り巻く環境がきな臭くなっている。専守防衛に徹し、海外に展開できる装備は持たない自衛隊。安保法とトランプ大統領の誕生で、どう変わろうとしているのか。AERA 12月12日号では「自衛隊 コストと実力」を大特集。最新兵器から出世レース、ミリメシまでいまの自衛隊に密着している。
軍事力増強を進める中国、「在日米軍撤退」「日本核武装」発言のトランプ次期大統領。防衛省・自衛隊がピリピリしている理由(わけ)を追った。
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「米国は世界の警察官であり続けることはできない」。こんなトランプ発言をとらえ、永田町では「自主防衛」が政治家の口をつく。そもそも自衛隊にどういう兵器があるのだろう。
憲法9条で戦力不保持を掲げる日本は「専守防衛」が基本。日本が攻められたら、自衛隊は侵略を跳ね返す「盾」で、敵国へ攻める「矛」は米軍の持つ攻撃型兵器という役割分担だ。
目立つのが警戒監視の充実ぶり。海上自衛隊は固定翼哨戒機P-3C(後継はP-1)で船や潜水艦を監視する。上空は航空自衛隊が早期警戒機E-2C(同E-2D)や早期警戒管制機E767で警戒。滞空型無人機グローバルホークも導入する。
領空侵犯の恐れのある航空機を見つければ、F-15が主力の空自戦闘機がスクランブル(緊急発進)。ステルス性が高くレーダーに探知されにくい最新鋭のF-35Aも配備予定だ。
装備には最新の情勢も反映する。中国の海洋進出をふまえ、海自は護衛艦や潜水艦、哨戒ヘリコプターを増やす。離島奪還に備え、上陸部隊を運ぶ輸送艦を改修。陸上自衛隊には上陸に使える輸送機オスプレイや水陸両用車AAV7が加わる。
●敵基地攻撃つのる誘惑
北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、弾道ミサイル防衛(BMD)システムは2007年から配備。撃ちもらしをなくそうと新システムも検討中だ。
一方、「専守防衛」なので持てないと政府が国会で説明してきた兵器もある。大陸間弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母──。もし米軍に頼らず「自主防衛」を目指すなら、敵国を攻撃するこうした兵器も必要になるかもしれない。