警戒を強める日本政府、領土問題の再燃を抑えるには(※イメージ)
警戒を強める日本政府、領土問題の再燃を抑えるには(※イメージ)

 尖閣諸島周辺での中国船の動きが活発化し、日本政府は警戒を強めている。今月23、24日の日中韓外相会談や、9月初旬の主要20カ国・地域(G20)首脳会議への影響も懸念されている。領土問題の再燃を抑えるには──。

 外海の荒波を浴び、中国公船と漁船、海上保安庁の巡視船が折り重なるように並走する。

 音声はないが、緊迫感は伝わる。この映像は、中国公船が領海侵入を繰り返した今月5~9日に尖閣諸島の魚釣島沖で撮影された。外務省や海上保安庁が15日以降、ホームページ上で公開している。

 政府によると、8月5日以降、18日午前8時までに最大15隻の中国公船が同時に接続水域に集結、延べ32隻が領海に侵入した。約200~300隻の中国漁船が尖閣諸島周辺の接続水域で操業する中、中国公船が漁船に随伴する形で領海侵入を繰り返す航行パターンが確認されたのは今回が初めてだという。

 8月上旬、ネット上では「尖閣諸島に群がる中国船」と題し、島周辺に漁船が密集している写真がSNSを通じて拡散された。コラージュ画像によるデマであることがすぐに発覚した。

●地元漁協は冷静

 面白半分で危機をあおる傍観者と対極にあるのが、地元の漁業者だ。

 沖縄県石垣市の八重山漁協の上原亀一組合長は、今回の動きを冷静に捉えている。

「中国漁船の形態を見る限り、例年と大きな変化はありません。今年は同海域での漁獲高が好調との情報もあり、それで多くの中国漁船が集まっているのであれば、漁業者の目から見れば何ら違和感はありません」

 尖閣周辺を含む海域は日中漁業協定の付属文書で、中国漁船の操業が認められている。夏期の漁が解禁される8月を境に、同海域を含む東シナ海で中国漁船が操業に繰り出すのは恒例だ。

「中国公船が多数の武装漁船を先導して侵略する」といった危機をあおる情報はさまざまなメディアで拡散されている。今回の中国漁船の集結に際しても、「中国は本気で尖閣上陸する気か」「武装漁船の大群が尖閣周辺に出現」との情報がネット上を飛び交った。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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