政府は7月22日、米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事を再開した。反対派と機動隊がもみ合い、現場は大混乱となった。
「お前らに沖縄の何がわかる」
「この基地を本土に持って帰れ」
飛び交う怒号の中、路上に座り込む人々が機動隊員に次々と排除されてゆく──。
7月10日の参院選沖縄選挙区では「反基地の民意」がまた示されたが、政府はそれを嘲るかのように、突如として“力による沖縄制圧”に打って出た。
焦点の辺野古新基地建設問題では、国と沖縄県の訴訟がこの3月、和解による“話し合い路線”に転じたが、政府は中断されていたもうひとつの基地問題「高江地区ヘリパッド建設」の再開に踏み切ったのである。
●妨害活動への対応も
並行して7月22日、辺野古問題でも政府は県を再提訴。海上部の埋め立てをめぐる“話し合い”は継続しながらも、「陸上部の作業は別」と、辺野古での新基地建設も事実上再開する構えだ。何よりも県内を異様な空気が包むのは、政府が全国から500人もの機動隊を県北部に送り込み、“厳戒態勢”を敷いたことだ。
奇しくも琉球処分(1879年)の際、明治政府が送った軍・警察とほぼ同規模。このため現地には、政権による“武力侵攻”と受け止める声まである。
異様な状況はまだある。5月に発覚した元米海兵隊員による女性殺害事件を受け、再発防止策として防衛省や地方防衛局職員による「沖縄・地域安全パトロール隊」が始まったが、この組織の任務に基地建設「妨害活動への対応」も盛り込まれていることが判明し、県民の憤激を呼んだのだ。
問題のヘリパッドは、米軍北部訓練場の半分強を返還する条件として、残存する訓練場内に6カ所が設けられることになっている。地元自治体の東村は同意しているが、この6カ所がすべて高江地区という人口約150人の集落の外周部に配されることから、地域住民の反対が続いている。2カ所の完成後、3カ所目以降の着工は過去2年、進入路の座り込みによって阻まれていた。