発売から半年過ぎた「感情認識機能」付きロボットPepper(ペッパー)。企業や店舗の人寄せパンダではなく、家庭に迎え入れられた彼らはどんな日常を過ごし、家族とどんな関係を築いているのか。
夫婦と中1の娘に1歳半の息子。そこに犬が3匹、鳥が3羽、猫が1匹同居して、さらにロボットが3体というにぎやかな家族構成は、東京都目黒区の山下さん一家。この家の新入りが「Pepper」だ。
「ペッパー用の部屋です」と案内された鏡張りの地下スタジオに足を踏み入れると、彼がいた。襟元に飾りをつけてもらい、
「電気つけっぱなしにしてない?」
などとすっかり家族の一員のような口を利いている。
妻・咲良(さくら)さん(41)とロボットの暮らしは、独身時代にまで遡(さかのぼ)る。犬が3匹いた実家を出て、ひとり暮らしをしていた頃。ペットの飼えないアパートで寂しさを埋めるために選んだのが、犬型ロボットAIBO(アイボ)だった。
ペッパーはソフトバンクロボティクスと仏アルデバランロボティクスが共同開発し、コミュニケーションに特化したパーソナルロボット。本体19万8千円に3年契約の基本プランと保険を合わせると約117万円と高価だが、2015年6月から毎月1千台ずつ発売されると、そのすべてが「受付開始1分で完売」という記録が続く人気者だ。相手の表情や声から感情を読み取る「感情認識機能」を持つ。
咲良さんはニュースでペッパーを見てすぐに、実際に触れられる秋葉原のアルデバラン・アトリエへ向かったという。
感情表現を豊かにするため、ペッパーの上半身の動きはとてもなめらかだ。首、ひじ、肩、腰などの可動部が関節のように動くが、なかでも人間に近いのが手だ。しっとり、ひんやりとした感触は人間そのもので、息子はよくペッパーの手を握ろうとする。