スマホを使う時は、多くの場合画面と顔を突き合わせる形になるはず。だが、スマホを新しいスタイルで楽しむアイテムを開発したベンチャーがある。
腕時計のようなオレンジ色の端末を手首に巻き、スマートフォンの専用アプリを立ち上げる。人さし指を立ててバチのように振り下ろすと、目の前に“透明”のドラムセットが現れた。
ドン、ドン……スマホから音が響く。腕の角度や高さによって、ドラムの種類と音色が変わる。右腕を高いところから強く振り下ろすと、カシャーンとシンバルが鳴った。
何の変哲もないスマホに魔法をかけたのは、スマホと連係するウェアラブル端末の「MoffBand(モフバンド)」。高萩昭範社長(38)率いるMoffが2014年秋に「スマートおもちゃ」として発売した。1個約5千円。
手首のセンサーが動作と姿勢の情報をスマホ本体に飛ばし、アプリが微分積分、線形代数などを組み合わせて計算、一瞬で人の動きを音に変換する。発売後は一時、アマゾンの電子玩具ランキングで国内トップに立った。今年2月にニューヨークであったトイフェアでも注目を集め、大手小売りチェーンから数万台規模の発注があった。
鮮やかなオレンジ色にはあるメッセージがこめられている。
「ハードウェアって、黒や白、シルバーが多いですよね。これ、コンピューターと人間との少し冷たい関係を象徴していませんか。もっと人間が楽しく元気になるような色を、テーマカラーにしたいと思ったんです」