


生きている中で、もっともたくさんの時間、回数を聴いたアーティストって、誰だろうと考えてみた。
わたしの場合、その中の筆頭に、ピンク・フロイドがいる。気がつくと、聴いている、という感じだ。
これには、いろいろなわけがあると思う。BGMのように、気軽に聴ける、というのもあると思う。正直言って、サウンドが、気持ちよいのだ。聴きやすいともいえる。これは、たんなるほめ言葉ではないが、何度も聴いてしまう理由にはなると思う。
ピンク・フロイドをはじめて聞いたのは、1970年発表の《原子心母》だ。わたしは、中学3年生だった。
当時、わたしはロックに目覚め、《レッド・ツェッペリンIII》を手にした。このレコード(当時は、もちろん、レコード)、音もさることながら、ジャケットがユニークだった。ジャケットの中に、丸い紙の円盤が入っていて、まわすと穴から見える絵が、変わるのだ。ま、絵が変わったからといって、特別なことが起こるわけではないのだが、こんなことを考えてしまう人たちがいるのが、驚きだった。
次に買ったレコードが、《原子心母》だ。これも、音もさることながら、ジャケットがユニークだった。いまでこそ、ヒプノシスのデザインだ、などと、当たり前のように言っているが、はじめて見たときの印象は、なにこれ?だった。
牧場で、乳牛が一頭、こちらを向いている。ジャケットは見開きで、中は、白黒の粗れた画質の牧場風景。裏面は、3頭の牛が、よだれを垂らして、こちらを覗き込んでいる。しかも、表面には、タイトルもアーティスト名も書いてなかった。こちらのジャケットの不思議さは、なんか変だ、という、そんな感じだった。でも、こちらを向いた牛の肖像写真は、よかった。今では、この牛の名が、「ルルベル3世」というのも、ファンには、常識であろう。
当時、シングル盤の「夢に消えるジュリア」とか「青空のファンタジア」などがヒット・チャートに顔を出したこともあったが、これらの曲がライブで演奏されることはなかったし、今でも、ほとんど話題にもならないようだ。でも、わたしの好みをいうと、ピンク・フロイドの牧歌的なフォーク調の曲も、好きである。
ピンク・フロイドは、《原子心母》の次の年に、《おせっかい》を発表し、来日も果たす。71年8月に初来日、音楽フェスティバル「箱根アフロディーテ」で野外ライブが話題になった。幻想的な霧の中での演奏だったとのレポートがある。
73年3月に、コンセプト・アルバム《狂気》を発表するが、これの製作過程を紹介しよう。
72年年1月のコンサートで「A Piece For Assorted lunatics」という曲をはじめて演奏する。これが、後の《狂気》の原型だ。この曲を元に、毎回、ライブごとに変更が加えられ、1年後、最終的に《狂気》となって、レコードで発表され、世界でもっとも成功したバンドへと向かうことになる。
2011年に発表された《狂気》(コレクターズ・ボックス)(DVD付)には、アラン・パーソンズがエンジニアを務めた《狂気》アーリー・アルバム・ミックス(未発表)や、製作過程のライヴやスタジオ音源が紹介されている。CD、DVD、ブルーレイの6枚組みだから、マニア向けでしょうか。
この後、各アルバムごとに世界ツアーが行われ、それらの内容の紹介もしたいところだが、長くなってしまうので、今回のオススメ・ライヴについての情報をお知らせしよう。
実は、今回も本物のピンク・フロイドではなく、トリビュート・ライヴ。
メンバーは、レベッカ、レッドウォーリアーズのギタリスト木暮“syake”武彦、VOW WOWキーボードの厚見玲衣をはじめとするピンク・フロイドの熱烈なファンでもあるミュージシャンによって行われる。
このプロジェクトは、昨年12年にも行われている。その内容は、「エコーズ」フル・バージョン、「原始心母」スタジオ・テイク。初期の「アストロミードミネ」から《狂気》《炎》などからも演奏されている。
08年にリチャード・ライトがなくなってしまい、もう、4人のピンク・フロイドを見ることは、かなわぬ夢となってしまった。
そういえば、わたしは、以前、木暮“syake”武彦、厚見玲衣の演奏を見たことがある。チケットぴあの「ぴあ」の野外イベントで、彼らは、キング・クリムゾンやELPをトップレス・ダンサーを従え演奏していた。
はい、かっこよかったです。
この夏は、ピンク・フロイドの世界へトリップしに行こう。[次回6/26(水)更新予定]
■公演情報は、こちら
http://pinkfloydtrips.com/