
まとめ買いも多いコミックはネットでの購入が便利。だが一方で、リアル書店ならではのサービスもある。2軒の書店を実際に訪ねてみた。
紀伊國屋書店新宿本店のコミック売り場は本館を通り抜けた別館の2階にある。書店のイメージと場所柄、ビジネスパーソンも多いという。
「リアル書店の売りは、なんといっても棚です。イチオシの新刊を並べるのはもちろん、フェアの棚を作って、私たちがお薦めしたい作品を並べています。POPをつけると、お客さんの反応が変わるのもうれしいです」
そう語るのは、コミック担当の吉浪寛子さん。
「店頭で書籍を購入すると電子書籍ストアで特典を手に入れることができるなど、新しいサービスも始めました」
電子書籍をライバル視するのではなく、共存していく販売方法も始まっているそうだ。
本の町・神保町で独自のコミック売り場を作る、書泉グランデの長谷見賢一さんは「本を手にとっていただけるのが、リアル書店の何よりの強みです」と話す。書泉グランデでは、シリーズ物の第1巻や売れ筋の本に「試し読み」用の見本を作り、自由に読めるようにしているのだ。
「本との出合いを作るのが書店の役割だと思っているので、作品を確認できるようにしています。1冊読んでから、シリーズをまとめ買いなさるお客様も多いのもうれしいですね」
タイトルや著者名があいまいな問い合わせは悩みの種だ。先日は海外からの旅行者が、紋章のような手描きのイラストを持参し、「これが出てくるコミックがほしい」との問い合わせがあった。頭をひねっていると、スタッフが「調査兵団の紋章かも!」と気づき、『進撃の巨人』を探しあてたとか。リアル書店は生きた情報の宝庫。ぜひ活用していきたい。
※AERA 2015年6月22日号より抜粋