20年後には3戸に1戸が空き家に──こんな衝撃的なシミュレーションが、現実になるかもしれない。空き家の増加は、これまで地方の問題とみられてきたが、首都圏でも深刻化しているのだ。
昨年7月に総務省が公表した「2013年住宅・土地統計調査」によると、日本全国の空き家は820万戸に上り、全住宅に占める比率は13.5%。東京都も約81万7千戸が空き家で、5年前から約6万7千戸も増えた。「オラガHSC」代表の牧野知弘さんは言う。
「戸建てに比べて、マンションは空き家かどうかの判断が難しく、東京の実数はもっと多いはずです。空き家率が30%を超えたら、東京でさえ、米デトロイト市のスラム街のようになってしまうかもしれません」
ここまで空き家が増えた理由のひとつに、税制の優遇措置がある。解体せずに空き家にしておけば、土地の固定資産税が更地の6分の1で済んだからだ。
だが、15年度の税制改正で「危険な空き家に対する優遇措置の撤廃」が盛りこまれた。倒壊の危険があるなど、管理がずさんな空き家は優遇措置から外す方針を決めたのだ。つまり、放置された空き家には、従来の6倍の税金が課せられることになる。
では、更地にして売りに出せばいいのかというと、コトはそう単純ではない。一般的な家屋の解体には約200万円の費用がかかる。解体前に家の片づけを業者に依頼すれば、さらに数十万円。それだけ費用をかけて更地にしても、その土地に値段がつかないこともある。
「千葉県、埼玉県の郊外で、駅からバスという物件だと、30坪くらいの更地が200万円以下にしかならない地域もある。これでは解体すらできません。地方に行くほど、こうした地域は多くなります」(牧野さん)
※AERA 2015年3月30日号より抜粋