アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はカルチュア・コンビニエンス・クラブの「ニッポンの課長」を紹介する。
* * *
■カルチュア・コンビニエンス・クラブ CCCデザイン図書館カンパニー 運営企画リーダー 椎名夏代子(35)
田園に浮かぶ近未来的な建物の中は、やわらかな間接照明に彩られ、木のぬくもりを感じる。館内のスターバックスでコーヒーを買い、くつろぎながら本を読む。きょうも多くの人でにぎわう武雄市図書館(佐賀県武雄市)は、レンタルチェーン「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、指定管理者として運営している。椎名夏代子は、ここで新しい図書館の“かたち”をつくりあげてきた。
館内には「蔦屋書店」がある。本を借りるのも買うのも、自動貸出機(セルフカウンター)で済ませる。本の貸し出しはもちろん無料だが、Tカードで借りるとTポイントがたまる。本棚は「生き方」や「暮らし方」などのジャンルごとに並ぶ。本を見つけやすいようにと考えた結果であり、従来の図書館にはない工夫だ。
私語は原則OK。館内にはBGMが流れる。「おしゃべりができれば、家族連れや若い人がより来やすくなる」と、市を説得した。壁で覆われていた幼児向けの読み聞かせスペースは、外から見える場所に移動させた。見られることで、読み聞かせるボランティアの声が、イキイキとし始めた。
昨年4月に新装開館したが、こうした工夫が評判を呼び、2013年度の来館者数は11年度の約3.6倍、92万3千人に増えた。「こんなの図書館ではない」と批判も受けるが、
「新しいサービスを提供しつつも、図書館が昔から地域で担ってきた役割や機能は、きちんと果たしているという自負はあります」
今は神奈川県海老名市、宮城県多賀城市の図書館再生事業も手がけ、「来年はどこにいるか分からない!」と、心を躍らせる。
大学卒業後、出版社に入り、06年、CCCに転職した。CD・DVD販売部から12年に、いまの担当になった。
「ずっと本とかかわる仕事をしたかった。夢がかなって幸せ。子どもたちが本に触れるきっかけをつくりたい」(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・小野美由紀)
※AERA 2014年9月1日号