
陽子さん(35)夫婦
犬5匹、猫4匹、テグー2匹、チンチラの計12匹との暮らしはいつもにぎやか。1LDKの部屋は「もちろんペット優先」で選んだ共生住宅。将来的に同棲や結婚を考えているなら「ペットが小さいころから、社交的に育てることが大事」と貴大さん(撮影/慎芝賢)
独身でペットを飼うと結婚できない…そんな説はもう古い。ペットと暮らす人が増え、動物たちがつなぐ縁もある。それどころか、婚活ではむしろ有利になり得るのだ。
編集プロダクションから事務職に転職して一人暮らしを始めたとき、星野陽子さん(35)は、デグーを家族に迎えた。ウサギに似たネズミの一種で、モモと名付けた。実家に残してきた愛犬が恋しかったからだったが、仕事の帰りを待ってくれている存在がいるだけで、幸せな気持ちになった。だが、それを知った職場の男性は、こう口にした。
「あー、やっちゃったね。一人暮らしの女がペットを飼っちゃったら…」
結婚できない。そう言いたげな顔だったが、まったく気にならなかった。仕事で家を空けている間も寂しい思いをさせないようにと、デグーとチンチラを1匹ずつ増やした。そんな陽子さんを見て、母は心配どころか、娘の変化を喜んでいた。
「明るくなったね。楽しそう」
放棄された猟犬を保護するボランティアにも参加するようになり、そこで出会ったのがドッグトレーナーであり現在の夫、貴大(たかひろ)さん(28)だった。
近所のコンビニに行くのにも、着替えとメイクを欠かさなかった陽子さんだったが、トレーニングの講習のため初対面はジャージー姿。髪の毛を一つに束ねただけで、ほぼすっぴんだった。
「犬に夢中で、自分のことに意識が回らなかったんです。彼がいると荒れていた犬が落ち着いて、楽しそうな顔をする。すごいなと感動しました」
肩の力が抜けていたことが良かったのか、自然体な彼女に、貴大さんが一目ぼれ。貴大さんが飼っていた大型犬1匹と猫1匹も一緒に新婚生活は始まった。
ペットを飼うと結婚できないという説はもう過去の話。むしろ今、逆の現象が起きているのだ。
「パートナーを見つけたい、結婚したいという意思さえあれば、ペットはものすごいアドバンテージになる。婚活の戦略としてペットを飼うほうがいいと思えるほどです」
そう話すのは、大手結婚相談所オーネットのマーケティング部部長、奥山秀夫さんだ。同社は2年ほど前から「○○好き集まれ」と趣味や嗜好(しこう)で参加者を絞った会員向けパーティーを全国で開催。旅行好き、映画好きなどと比べても「ペット好き」は参加者が多く、常に満席という人気ぶりだという。普段は緊張してなかなか会話がはずまない人でも、携帯でペットの写真を見せたり、ペットショップや散歩について情報交換をしたり、会話は尽きないという。
※AERA 2014年12月8日号より抜粋

